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プロローグ

自分を見てくれる人はなんていなかった。 父親が社長という肩書だけが、幼い頃からの自分のステータスだった。 「おまえは突っ込まれることだけ、気持ちいいことだけ、考えろ」 ――『それが肉便器だ』 あの日から、肉便器として扱われていれば、自分が必要とされている人間なのだと感じるようになった。 たとえ精液の掃き溜めでしかなくても、それでも自分は誰かの欲望のはけ口としての役割を果たせた気がするから。 複数の男に犯されて、快楽の海に溺れているときが、一番幸せだ。 散々精液に汚され、疲弊したあと、視界に入った男の背には、羽のタトゥーが彫られていた。 きっと、天使が自分に生きる価値を与えてくれたのだ。 夜の乱れた自分がいるから、淑女のような昼間の自分を保っていられる。 そんな自分を、きっとあいつは薄ら笑いを浮かべていうだろう。 どこまでも甘い男だ、と。

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