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第22話
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な、何なんだ?あんな顔するくらいなら最初からするなよ。
部屋に戻った俺はため息を吐きながらいろいろと考えた。男で、しかも未成年の幼馴染にフェラでイかされた俺に誤ってきた伊織。とても申し訳なさそうで悲しそうな表情を目にして「絶対許さねぇ!」なんて言えるかよ。
ホント俺って伊織に対して甘い気もする。これは昔からそうなのだが……
こうして戻って来て、伊織と再会してから、遠い昔の記憶が徐々に掘り起こされてきている。まだ伊織が親が傍にいて欲しいような小さい時、よく泣いて俺は伊織が落ち着いて寝るまであやしていた事がある。
それだけじゃなく、伊織を連れて遊びに行ったときも、親子連れが手を歩いているのを見て、伊織は黙って俺に手を差し伸べてきたから、小さな手を握ってやったし、伊織がこうしてほしい、ああしてほしいって言う我儘を聞いてやったな。
あの頃は本当に可愛くて、弟のようだったが、今の姿はちっとも可愛くない。もう二年もしたら立派な成人になる男なんだ。けど、どんなに年月が経とうと、俺は伊織に甘い気もする。
俺は布団に潜り込んだ。
伊織は気を使ってリビングにあるソファで寝ると言ったが、まだ夜は寒い。風邪を引かないといいが……なにせ伊織はテニスの特待生だ。この先大事な試合だってある。
そういえば毛布持ってたか?
一つの事が気になりだすとあれもこれもと気になりだしていけない。
眠気が次第になくなり、目が冴えてきてしまった。
「ったく、しょうがない……」
もしもを考えて俺は毛布を持って一階に降りた。
電気は消えていたのでもう寝てしまったのかもしれない。伊織を起こさないようにそっとリビングの扉を開け、中に入ると、案の定伊織は毛布も被らずにそのままの姿で横になっていた。
「まったく……これじゃ風邪引くぞ」
俺は持ってきていた毛布を伊織にかけてやった。すると寝ているはずの伊織が俺の手を掴んできた。
「伊織!」
「へへ……やっぱコウちゃんは優しいね。毛布ありがとう」
「お…おう……」
なんだよ。起きてたのかよ……なんだか拍子抜けしてしまい、俺はその場に座って伊織と目線を合わせる形になった。
「コウちゃん……さっきの怒ってる?」
「いやもういい……怒ってないから」
「ホントに?」
「あぁ……」
怒ってないというよりも怒る気力が起きない。例え幼馴染とはいってもあれはマズイし、いろいろと後味が悪い。こいつは気にしてなくても俺が気にしてしまう。それに掴んでいた手はいつの間にか俺の指に絡まるようにして繋がっているし。
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