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第24話
それから俺と伊織の間に特に変わった事はなかった。
俺はつい、手を出してくるんじゃないかとばかり考えてたが、そんな事はなく、朝は俺より早く起きて朝食や弁当を作って、荷物や着替えの為に自分の家に戻る。しかも弁当も俺の分まで用意してくれている。帰りも夜の七時前で、寝る時も俺の部屋じゃなくリビングのソファだ。
正直あいつの考えてる事が俺には理解出来ない。
二日目、三日目辺りまでは俺も気にしなかったが、四日目くらいになると、なんだか拍子抜けだし、ソファで寝る姿がいたたまれなく感じてしまった。
「お、おい伊織。今日から俺のベッド使って寝ろよ。俺はこっちで寝るから」
「どうしたの?急に?」
風呂から上がり、寝る体制に入っていた伊織にそう告げると、伊織はきょとんとした顔で俺を見ていた。
「いや、ずっとソファで寝てるしなんか悪いと思って」
「いいよ。持ち主追い出してまで一人占拠する程俺、図々しくないから」
「いやいや!なんか俺が気になるんだよ。ほら、お前部活とかで疲れてるだろ?なのにソファで寝たら疲れ取れないだろうし」
「気を使ってくれてありがと。でも大丈夫だよ」
お前が大丈夫でも俺の良心が大丈夫じゃないんだよ。そんな俺を見越してるのか、伊織はクスクス笑いながら「じゃあ」と言った。
「一緒に寝ようよ」
「お、お前なぁ……」
なんでそうなるんだよ。伊織の提案に警戒すると、伊織は声を上げて笑った。
「やだな……一緒に寝るだけだよ?何もしないし。もしかしてコウちゃん何か想像した?」
「普通するだろ!だってお前前科あるんだぞ!」
「それもそうだね。けど無理やりはしないって言ったはずだよ」
たしかに伊織と一緒に寝るって事は、またやらしい事をされるかもしれない。そう思ったさ。けど伊織はそれはないって……言った俺自身恥ずかしくなって、耳まで熱が上がるのがわかる。
「まぁ、してもいいならしたいけど」
「あのなぁ……」
「俺の気持ちはもう言ってるよ。コウちゃんが欲しいって……」
それを聞いた後で一緒に寝ると言うのも、いささか現金な感じもするが、一度言ったことは曲げない伊織だ。何もしない事を信じて「わかった。お前を信じる」と言って一緒に寝る事にした。
部屋に移動し、さあ寝ようとしてもシングルの狭いベッドだ。普通に寝られるわけもなく、俺は前に伊織が泊まりに来た時同様、抱きしめられる形で寝る羽目になった。
「なんでこの体制なんだ?」
「仕方ないでしょ?二人だと狭いし……」
「だったら床でお前か俺が寝ればいいんじゃ……」
「ダメ。この方が温かいでしょ?」
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