24 / 63

第24話

 それから俺と伊織の間に特に変わった事はなかった。  俺はつい、手を出してくるんじゃないかとばかり考えてたが、そんな事はなく、朝は俺より早く起きて朝食や弁当を作って、荷物や着替えの為に自分の家に戻る。しかも弁当も俺の分まで用意してくれている。帰りも夜の七時前で、寝る時も俺の部屋じゃなくリビングのソファだ。  正直あいつの考えてる事が俺には理解出来ない。  二日目、三日目辺りまでは俺も気にしなかったが、四日目くらいになると、なんだか拍子抜けだし、ソファで寝る姿がいたたまれなく感じてしまった。 「お、おい伊織。今日から俺のベッド使って寝ろよ。俺はこっちで寝るから」 「どうしたの?急に?」  風呂から上がり、寝る体制に入っていた伊織にそう告げると、伊織はきょとんとした顔で俺を見ていた。 「いや、ずっとソファで寝てるしなんか悪いと思って」 「いいよ。持ち主追い出してまで一人占拠する程俺、図々しくないから」 「いやいや!なんか俺が気になるんだよ。ほら、お前部活とかで疲れてるだろ?なのにソファで寝たら疲れ取れないだろうし」 「気を使ってくれてありがと。でも大丈夫だよ」  お前が大丈夫でも俺の良心が大丈夫じゃないんだよ。そんな俺を見越してるのか、伊織はクスクス笑いながら「じゃあ」と言った。 「一緒に寝ようよ」 「お、お前なぁ……」  なんでそうなるんだよ。伊織の提案に警戒すると、伊織は声を上げて笑った。 「やだな……一緒に寝るだけだよ?何もしないし。もしかしてコウちゃん何か想像した?」 「普通するだろ!だってお前前科あるんだぞ!」 「それもそうだね。けど無理やりはしないって言ったはずだよ」  たしかに伊織と一緒に寝るって事は、またやらしい事をされるかもしれない。そう思ったさ。けど伊織はそれはないって……言った俺自身恥ずかしくなって、耳まで熱が上がるのがわかる。 「まぁ、してもいいならしたいけど」 「あのなぁ……」 「俺の気持ちはもう言ってるよ。コウちゃんが欲しいって……」  それを聞いた後で一緒に寝ると言うのも、いささか現金な感じもするが、一度言ったことは曲げない伊織だ。何もしない事を信じて「わかった。お前を信じる」と言って一緒に寝る事にした。  部屋に移動し、さあ寝ようとしてもシングルの狭いベッドだ。普通に寝られるわけもなく、俺は前に伊織が泊まりに来た時同様、抱きしめられる形で寝る羽目になった。 「なんでこの体制なんだ?」 「仕方ないでしょ?二人だと狭いし……」 「だったら床でお前か俺が寝ればいいんじゃ……」 「ダメ。この方が温かいでしょ?」

ともだちにシェアしよう!