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第36話

 見てたって……反応薄いな。  それで?あの子と俺が話してるの見て、なんでコウちゃんが俺を避けるの?」 「別に避けては……」 「避けてるよ。だってさっきから全然俺を見ないじゃん」  本当俺って中沢に言われたように誘導尋問に引っかかりやすいな。自分の事だから余計に呆れてしまう。 「ちゃんと俺の事見て話して」  グッと伊織の両手が俺の頬を掴んで伊織の方を向かされた。やばい。今の顔を伊織に見られたら誤魔化せない。 「コウちゃん顔赤いよ」 「べべ、別に他意はない!」 「そう?だったら教えてよ、コウちゃん。俺が女の子と話してたの見てどう思ったの?」 「うっ……い、嫌……だった……」  観念した俺が小声でそう言うと、満足した顔を見せた伊織が俺に軽く啄むようなキスをしてきた。 「安心してよ。あの子とは何でもないよ。ただ家に来ただけだし」 「でも……あの子お前に気があるようだったけど……」 「だろうね。でもそれとなく断ったよ。付き合ってる人いるかって聞かれたけど、なりかけてる人がいるって」  なりかけてるって……明らかに俺の事じゃないのか?そう思った時、また伊織の唇が俺のと重なった。 「ねぇ、コウちゃんがあの子に焼きもち焼いてたって事は、少しは俺の事、好きになってくれたって解釈していい?」  ストレートに問われて俺もどう返していいのか戸惑った。このまま「うん」と言ってしまえばいいんだろうが、俺の中でブレーキがかかってしまう。 「ちゃんと答えてコウちゃん」  あくまでも優しく、問い詰める感じではいものの、確実に俺に催促している。このまま違う事を言っても嘘だとばれるだろう。俺は観念する事にした。だが言葉にはしない。その代りに俺から伊織にキスをしてやった。 「コウちゃん?」 「これが答えだ。それ以上も以下もない」  顔は固定されたままなので、目線だけを伊織から逸らした。すると伊織はクスッと笑うと「コウちゃん」と甘い声で俺の名を呼んだ。

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