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第25話
これが7年もの年が離れたDKと1年余りでアラサーの仲間入りをする仁作との違いだ。
二次元の世界線で生きていない仁作は、残念ながら無精髭が一晩で生えてくる。青さまではないが、鴬の柔らかな頬に無精髭を擦れば、鴬の肌を傷つけているようなジョリジョリ音が痛みを与えている。
(若いってすげぇんだなぁー)
笑いながら痛い、と言う童顔高校生を無視して起き上がる。
「ま、鴬の確信犯を抜きにしても、俺が案の定暴走したわけだし、今日は俺が学校まで送ってくわ」
罪滅ぼしのつもりで言ってみた。身体を無茶させた本人が労ることが、責任をとるというものだと自覚して。
その言葉に、明らかに部下への憤懣とした感情はさぴ、と消え失せたようで、「え、仁作の運転?! やった!」とうれしそうだ。
若いということは無尽蔵の体力を持つことだと、自分自身がまだまだ子どもであった頃に散々兄貴たちに揶揄されてきたことが今になって、「羨ましいもの」であることだとこの年になって気づく。
華奢で他の高校生と比べれば見劣りする体力のくせに、鴬も例に漏れず無尽蔵の体力を有しているらしい。疲れたという言葉を聞くことなく、尽き果てた一夜。
暴走するだけの体力がある仁作も、客観的には若い層に区分されるのだが、隣に元気いっぱいの童顔高校生の笑顔に充てられて、自身の多少の老いを感じずにはいられなかった。
「おら、飯作ってくれてるらしいから、起きるぞ。起きれるか?」
「うん起きる」と何でもないように立ち上がる刹那——小さく唸りその場にしゃがみ込む。
「ま、その反応が見れただけ良かったわ。マジでひとりで準備してくれたんだな」
へたり込むように座るので、鴬を担ぎ上げた。「ありがとうな」とお礼も添えて。
「……お互い一途過ぎて笑っちゃうね」
「そうだな」
寝室を出るとすぐさま朝食の匂いで充満した香りに包まれる。
「ちょ、何モタモタしてんですか!」
部下の急かす声に背中を押されて、2人は朝食を済ませ常盤組の日常へと戻って行く。
部下と鴬を乗せて学校まで送り届けた後、高校生と逆走しながら息を吐いた。
「俺、もうすぐアラサー。鴬はまだピチピチの高校生……」
「そうっすねー」
「おい、適当に流すなよ」
「そう言われてもっスよ。見た目は高校生でも、鴬さんは若より出来るじゃないスか」
「……」
ルームミラーで部下の顔をじとりと睨んだ。目が合うとそそくさと窓の外を見る部下に、「お勉強は専門外だ」と一応の言い訳をしておく。
「でも、みんな若を舐めてるわけじゃないんスよ。愛すべき若なんです」
「それを舐めてると言わずに他に何がある」
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