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第20話 エンペラー探偵 佐藤
今日も嫁の事件が俺を、呼んでいる。
嫁のパンツに隠された2億の指輪を適切に処理する。
そして泥棒野郎を嫁に近寄らせない。
それが今回のミッションだ。
まず評判の悪いオークション主催者と連絡をとる。
ホテルの一室に呼び出した。
奥の寝室からは、早瀬の源との交渉が聞こえてくる。
源を捕まえた早瀬には、あえてそこに居てもらっている。
「うあああ!!くっ…あっ…駄目だ!!違う!俺は…くっ…やめてくれぇ!」
貿易会社の満福社長が、源の声に興味を持ちながらも、ビビっている。
丸々と太った体が縮こまっている。
満福をソファに座らせて、俺はその後ろから奴の耳元で囁いた。
「よくも俺の結婚報告会を邪魔してくれたな」
満福の体が目に見えて震えだした。
そして、うちの警備が取り返してやったぞ、と指輪を出す。
満福の太った指が指輪に触れようとした時…
「ああ!!うぅ…やめろぉ……もう……」
源の元気な声が聞こえてくる。
満福が手をおろした。
俺は指輪をつまんで満福の顔の横で眺めた。
「ところで、ウチの嫁がこれを気に入ったらしいんだが、売ってくれるよな?」
「は、はい…喜んで!!」
指輪をポケットにしまう。
タブレットを取り出し、ダイヤの適正価格から数割引の値段を提示する。
満福の膝の上に、優しくタブレットを置いてやった。
「……いいだろう?」
後ろから満福の肉のついた肩を揉んでやる。
「…も…もちろんです!!」
直ぐに話の分かるやつで良かった。
俺は満福の肩から手を離して、奥の部屋へ向かう。
「お前も一緒に行くか?指輪の代金を払ってくれる奴が居るんだ。」
「はひっ!!」
満福がぴょんと立ち上がり、小走りでソファを回ってこちらに来た。
なんか豚のキャラクターかなんかに見えてきたぞ。
「紹介するぜ…」
奥の寝室ではスケスケのピンクのワンピースを着た源が、大分出来上がっていた。
ゴクリ
満福がつばを飲んだ。
「良かったですね源さん。素敵なβの御主人様ができそうですよ」
早瀬が源に微笑んだ。
「いっ…いやだ!!せめて、貴方が良い!!ずっと憧れてたんです!佐藤様!!」
「満福社長。代金の支払いは源の小切手と、早瀬が調教したあとの源の体とどちらがいい?」
「さっ佐藤様!!」
「金は必要ありません」
「すごいな、源。お前1億3000万でハンマープライスだ」
俺と早瀬で拍手を送った。
よし、一件片付いた。
次は少し時間がかかるかもしれねぇが、夜明け前までには片付けてぇ。いつまでも千歳を航助兄の所に置いておく訳にもいかねぇしな。
狩りを始めよう。
現場の奴らは騒げるお祭りが大好きだ。賞金があれば、もっと白熱するだろう。
結局、源から5000万ほど活動資金を出してもらったしな。
いくつかの防犯カメラの映像と、そこから想像される他の格好をしたモンタージュを作成させた。
都内の多くの探偵事務所にも詳細を送った。
明朝までに、この男を確保し連れてきたものに賞金5000万。
「よぉ。やっと逢えたな」
そろそろ日が登り始めた午前4時。
確保の連絡が入り、早瀬の運転手付きの車で駆けつけると、後部座席のドアが開いて、隣に男が押し込まれた。
「……はじめまして…ご招待頂き光栄です」
男は紺色の着物を着て、髪を撫で付け、まるで噺家のようだ。
眼鏡に従業員服だった防犯カメラの映像とは印象がまったく違う。
さすが泥棒。カメレオンのような男だ。
「俺の嫁が世話になったな。……プレゼントだ。ちゃんと金も払って来た」
洗浄して、相応しいケースに入れた指輪を男に差し出した。
「……あなたの番はとっても可愛いですが、凄く危なっかしい人ですね……ちゃんと繋いで置かないと駄目なんじゃ無いですか??今度は彼が盗まれるかもしれませんよ」
男がケースを受け取り、着物の袂にしまった。
「惚れても無駄だぜ。あいつのものにしてもらえるのは俺だけだからな」
千歳にもらったダイヤのピアスをいじる。
千歳への愛しさで、自然と笑顔が溢れてしまう。
千歳はただのΩじゃないぜ。
俺の運命の番で
パンツに2億入ってる男だからな…。
「…とりあえず、大人しく引き下がります。千歳くんによろしくお伝え下さい」
男が頭を下げて、車のドアに手をかける。
「伝えねーよ。二度と来るな。じゃあな、こそ泥」
つまらない事件を解決してしまった。
ちゃらら~
ララバイ、俺の子守唄
エンペラーなのジゴロなの♪
キングオブαの佐藤、三郎太ぁあ。
嫁の事件を、金と部下の力でサクッと解決
焼きそばの香りとハードボイルドが堪らない♪
キラリと光る左耳のダイヤは嫁の給料1ヶ月分、番の証♪
頑張れ、三郎太
次回予告、役所へ行こう。
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