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第24話 君の番は
「…ん…あれ?」
目が覚めたら、そこは異世界でした。
じゃなくて、お風呂だ。
あったかーい。
気持ちいい
「おっ目が覚めたか?大丈夫か、千歳」
「……佐藤…僕は…」
あっ、そうだった。
僕、佐藤と番になりたくて早瀬さんの発情誘発剤のんで、佐藤とセックスして…
今は湯船の中で佐藤に後ろから抱かれてる。
しまった、佐藤病気なのに!!
僕は佐藤の方を振り向いて
「さと「死なねぇからな!!」
え?
なんか凄い食い気味に言われた…。
「なにを勘違いしたか、もう大体わかるけどよ、病気で死にそうになって死んだ後のまとめしてたわけじゃねーぞ!俺に突然なんかあった時の為に、資産の整理をしたり、遺言状書いたり、色々やってた。後々お前すげー心配だから準備してるんだぜ。俺はお前の事が心配で死んでも死にきれねぇよ……」
佐藤が困った顔してる。
え?僕、なんでそんなに信用されてないの!?
立派に社会に出て働いて一人暮らししてたんだよ。
まったく佐藤の自分基準で考えたら、僕はちょっと抜けてるように見えるかもしれないけどさ……
「僕、しっかり者だよ」
「……」
何、その沈黙!!
くそぅ…佐藤のくせにぃい
でも
でも
「良かったよぉ。佐藤が死ななくてよかったぁ!!」
僕の涙腺は崩壊した。
佐藤がやれやれと優しく笑っている。
笑顔に愛が溢れている。
あぁ好き!!
「佐藤!!大好き!!佐藤とずっと一緒にいる!」
佐藤の首に腕を回して抱きついた。
「あぁ千歳といると一生退屈しなそうだ」
佐藤が僕の項にキスをした。
「ただよぉ…1つ謝らねぇとならねーんだ」
佐藤が、へへっと笑っている。
なに…凄い怖いけど…。
「お前…今日、中途半端にヒートしてたみたいでよぉ…その……なんだ」
凄い言いよどんでる。
何があったんだろう…。
「中途半端に歯型が残っちまって……ネズミに齧られたみたいになった」
「はあああ??」
ザパーーっと湯船から立ち上がった。
お湯が佐藤にすごいかかってるが気にならない!
腰とお尻が痛いのも!!
僕は大きな鏡の前で振り返った。
見えない!!
びしょ濡れの裸で脱衣所に出てスマホで自分の項を撮影した。
画像処理にかかる時間がわずらわしい!!
出た。
「何これ!!」
上の歯二本と下の歯二本だけ残っている!!
ネズミにかじられてるじゃん!!
「さ…さ…佐藤のばかぁぁ!!かっこ悪いよぉ!!こんなの番の噛みあとじゃないよぉ!君の番はネズミかい?とか言われるよおお」
湯船に浸かる佐藤に歯磨きのコップを投げつける!
「はははは、お前らしくて良いんじゃねーか。俺は気に入ったぞ」
コップを見事にキャッチした佐藤が余裕の笑みで笑っている。
「やだぁよぉ!かっこ悪い!!もう、しばらく佐藤とはしない!!禁欲ね!!」
僕はバタンとお風呂のドアを締めた。
本当はそんなに怒ってないけど、佐藤が死なない安心で、ホントに泣いちゃいそうで…バスタオルを持って寝室に逃げ込んだ。
ババっと体を拭いて布団にくるまった。
良かったよぉ。
ホントに良かったよぉ!!
グズグズ泣いていると、佐藤がやって来た。
「美味しそうなチーズだちゅー。もう一回齧ってもいいチューか?」
誰がチーズだあ!
「……さーとーうー!!」
僕の必殺技を受けてみろ!!
僕らの騒ぎは小一時間続いた。
後にこれは、ねずみ項事件と言われるようになった。
めでたし
めでたし?
【完】
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おまけ
「サブ、お前の病気のせいで番の噛み跡がああなっているのか?」
「あぁ??」
「これは私からのプレゼントだ。自分のものが使えなくても、パートナーを楽しませる事ができる。ぜひ使ってくれ」
早瀬が怪しげな大きいアタッシュケースを渡してきた。何の事だ??
「おっ…おう。ありがとよ?」
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