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夜明けの華 6

「社長から話を聞いているならよかった。原田蓮です。肇くん、宜しくお願いします」  蓮が笑顔で差し出した右手を、肇はあっさりと無視した。乱暴に靴を脱ぎ捨て、蓮の脇をすり抜ける。 「あんたなんて必要ない。この家からさっさと出て行け」  吐き捨てるように呟いた肇の言葉にムッとしたが、蓮は肇の背後に続き、落ち着いた声色で話しかけた。 「家主ではないきみに出て行けといわれる筋合いはない」  足をとめ、肇が振り返る。 「ここは俺の家だ」 「きみの家ではない、社長の家だ。そして俺がここに居るのは社長の命令だ。急速に落ちたきみの学力を戻す事、きみの素行を正す事が俺に課せられた緊急指令だ。俺も長居はしたくない。協力してほしい」 「あんた、ばっかじゃねえの」  踵を返し、二階への階段を上がり始めた肇の背中に声をかける。 「肇くん、夕飯は」  またしても無視された。蓮も階段を上がる。 「藤田さんの食事は美味かったぞ」 「うるせえ、ついてくるな……わっ! てめ、人の部屋に入ってくんなよ!」  自室の扉を開けた肇の後に続き、蓮も半ば強引に室内へと押し入る。 「ふっざけんなアンタ、どういう神経してんだよ!」  蓮を部屋から追い出そうとする肇の力に対抗しながら、申し訳程度に「お邪魔します」と一声かける。 「おお、これはすごいな」

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