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欲しがるワンコは待てが出来ない 6
「原田の全部、俺がほしい、いまはだめでも、いつか全部」
肇の指の動きが荒くなっていく。二本に増えた指先をバラバラに動かされ、身体をのけぞらせた。
「原田、なんか言って」
指を引き抜かれ、熱い塊の先が入口に当たった。入口を押し広げながらゆっくりと、肇の硬い屹立が蓮の腹の中へと入ってくる。異物感で胸が苦しくなるけれど、それは甘美な苦しみだ。もっと欲しいと、身体が求める。
「原田、なんで泣く」
肇の言葉で、自分が泣いている事に気付く。滲んだ涙がじわじわと溢れて、蓮の瞳から流れ落ちる。
「痛かったか」
「痛く、ない……」
微かに答えると、不安そうな声で、じゃあなんでだと重ねられた。
「俺が嫌なのか」
涙で歪んだ視界の先に、眉間にしわを寄せた肇の顔が見えた。違う、そうじゃない。でも、伝える言葉が見つからない。この気持ちをなんと言ったら良いのか、わからない。
首を振ると、力強く抱きしめられた。肇の舌先が、流れた涙を舐めとっていく。
好きだ、すきだと駄々をこねるように何度も呟く子供の背中に腕をまわして、抱きしめ返すと、更に強く抱きしめられた。動けないし、息が出来ない。息ができない。
「原田、はらだ……俺はお前がほしい、お前じゃなきゃだめだ、他にはなにもいらないから……原田」
この愛情に頷いてしまったら、どうなるんだろう。ぎりぎりのラインで自分の心をセーブする。
八方塞がりだと、心の中でひとりごちた。
肇のように思いのままに言葉に出来たら。
自分を抱きしめて離さない肇の身体を、蓮は全身で抱きしめて、涙を滲ませたまま、ほんの少し微笑んだ。
<おわり>
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