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どんなに暗い夜だって… 5-1(夏樹)

***  仕事帰り、いつものように大学に雪夜を迎えに行った。  会社を出る時に連絡しておくので、大抵着いたらすぐに出て来る。  それが、今日はなかなか出てこなかった。  慌てて出てきた時の雪夜の顔が少し青ざめて見えたのは、気のせいなんかじゃない――…… *** 「今日はバイトどうだった?」  晩御飯を食べながらさりげなく話を振ってみる。 「え?あ~……えと……今日は――」  緑川の部屋を片付けるバイトは、まだ続いている。  他のバイトの合間にしているせいもあるが、すぐに必要なものと、しばらく使わないものに分けて片づけていたはずなのに、緑川が使わないものに入れたはずの資料をしょっちゅう取り出し、しかもどこに入っているのかわからないので全部ひっくり返してしまい結局部屋の中が片付かないのだとか。  そんな調子じゃ、いつまでたっても(らち)が明かないので、資料を箱に詰める前に全てデータ化して、どの箱にどの資料が入っているかすぐに分かるように雪夜が整理しなおしているらしい。  今日もその作業を延々としていたと言う。  話の内容に特に変わったことはない。俺には言いたくないのか、それとも…… 「あははは、なんだそっちか~……俺絶対Aだと思ったのにな~……」  夏樹は食後のコーヒーを入れながら、不自然なくらい機嫌良くテレビを見て笑う雪夜を見てそっとため息を吐いた。  うん……やっぱりおかしい……  雪夜が夏樹を見て、小首を傾げた。 「夏樹さん?」  何かあったんじゃないのか?  口に出しかけて、飲み込む。  今は下手に刺激しない方がいいかな……もう少し様子を見てみよう。  心配事や困り事など、何かあれば必ず夏樹にも話してくれといつも言っている。  だが、そういうことほど、ひとりで抱え込むのが雪夜だ。  雪夜から話してくれるのを待ちたいが、放っておいて後悔するのはもう嫌だ。  大学の事だったら、佐々木にちょっと聞いてみるか。  佐々木も雪夜のそういう性格はわかっているので、何かあれば教えてくれる。  夏樹には言えなくても、友人である佐々木には相談していることが多いし……  佐々木が知らないなら、俺の気のせいってこともあるし……  どうしてもわからなければ、直接雪夜に聞いてみよう――…… ***

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