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第37話
自分でもびっくりするほど動揺してるのがわかる。けど、どうしようもない。
清瀬先輩にこんな悲しい顔させてるのが自分だと思うと今すぐ車道に飛び込みたくなる。冗談じゃなく死ぬから飛び込まないけど。
「先輩、あの、ほんとに…どんなお詫びでもするんで、ほんとに泣かないでください…。何、え? どうすればいいですか? 脱ぎます?」
「おい、落ち着け万谷。脱ぐな」
「元はと言えばあんたのせいなんだよなァ!?」
「態度!!」
態度がどうした。
「…万谷くんは涙に弱いタイプなんだね。…悪い女の人に騙されないか心配…」
「大丈夫、先輩にだけです」
「えっっ」
清瀬先輩の顔がぶわっと赤く染まる。
あれ? 俺また何か変なこと言った?
「って言うか、何なんすかほんとに! 確かに俺は清瀬先輩に近づき過ぎてる自覚はありますけど、だからって真下先輩たちと同じ括りにされんのすげぇ不快です! こんな綺麗で可愛くて純粋な清瀬先輩を! 何でこんな普通が服着て歩いてるような俺が…! 騙すとかそんなこと出来るわけないでしょうが!! 地獄に落ちるわ!!」
シノギダ先輩に向かって怒鳴ると、何でか微妙な顔をされた。何でだ。
「清瀬に傾倒しすぎだろ…じゃなくて、前に、弁えてるって言わなかったか?」
「…」
それを言われると、つらい。
だって欲が出てるから。付き合えないのは分かっていて、それでもそばにいたい。
「…言いましたね」
「それでも今、弁えてるのか?」
「だから、自覚はちゃんと…」
「弁えてる、って、何?」
不満げな声は、俺の隣から。
清瀬先輩がふくれていた。うわ、可愛い。可愛いの権化。
「そいつと噂にでもなったら困るだろう。だから距離を…」
「何でシノくんにそんなこと言われないといけないの? 俺が誰といたっていいじゃん。困ったことなんて…っ」
「真下と付き合ってた時 何て言われてたか忘れたのか」
言い募る清瀬先輩より強い口調で、シノギダ先輩が遮った。
俺の知らない先輩の話。それが少し淋しかったり悔しかったり。だけどそれは仕方のないこと。
「…嫌なこと言ってたのは、谷口くんたちだけだよ」
「そいつといて誤解されて、また同じことを言われるとは思わないのか」
「……万谷くんは、谷口くんたちとは違う」
谷口先輩たち…真下先輩の恋人って分かっててたちの悪い遊びとかからかいとかしてたのかな…。だとしたら、すげぇ腹立つ。
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