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第36話 バレンタイン[終] バレンタインだからしょうがない♥
「……もしかして機嫌でも悪い?」
生徒会室で向かい合う俺と遼太、「好き」が書かれまくった呪われたカードを手にして聞いてみたら、「悪くないよ。」と言う。
垂れ目だからか穏やかそうに見えるけど、実は怒っているのかもしれない、小さい字で「好き」が100個は書かれているのを読み上げろなんて嫌がらせかな?
もう門限も迫って早く帰らないといけないのに、まあ100回好きって言っても、1回言うのに1秒だとして100秒、多く見積もっても2分だから大した時間でもない。
やるか…100回好きと言うだけで機嫌が直るならたやすい事だ。
外はもう真っ暗で夜になっている、さっきまで聞こえていた校内の騒めきも消えている、生徒会室で二人きり、男二人で向き合って「好き」を100回言わないといけない不思議状態、俺は何をしているのだろう?
疑問過ぎるけど、このクエストをこなさなければ帰宅できない、カードを持って顔を上げた。
「分かった、読むから、よく聞けよ。」
「おう、全力で聞く!」
これがリア充のノリなのか?遼太が楽しそうだ。
指で文字をなぞりながらイッキに読み上げるのを試みた。
「好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好きっ!!」
「好き」を続けて言うと「好き」と言っているんだか「キス」と言っているんだか曖昧になるけど言い切った、「どうだ、満足か遼太っ!」と言うと「むうっ!!なんかいいっ!!」と顔を抑えてプルプルしている。
こんなことで喜んでくれるなら何よりと帰り支度を始めていると後ろから抱き着いてきて「もう一回読もうか?」と絡んでくる。
彼はデカいのに甘えるのが上手い、可愛いと思うけど帰らないと本気で門限に遅れる、角が立たない程度に断ってみた。
「明日の昼休みに読むよ。それでいい?」
「今がいい…、いいじゃん?」
「よくない、もう帰る時間。」
「バレンタインだから大丈夫だって…。」
どういう根拠で?と思っている内に巻き付く腕の力は強くなり、読まなきゃ離さない意気込みが伝わって来た。
抵抗しても無駄だから「分かった、読むよ、読んだら離せよな。」と言って読み始めた。
「好き、好き、好き…」と読み始めてすぐに「そうだよな。」と耳元で囁かれ、着こんだダッフルコートのタッセルを外して来たから手を掴んだ。
「…脱がすな、帰らせない気か?」
「全部読んだら帰っていいよ。」
「ホントだな?」に「うん」と言うから早口で「好き」を連呼していると顎を掴まれて唇が押しつけられ、むごむご言ってると「もう少しゆっくり言おうか?」と言い出した。
絶対、帰す気がない…。
「好き」と言う度に外されて行くタッセルとボタン、素肌に手が滑る頃には「好き」と言うのも帰ろうとするのも無駄な気がしてきた。
触られすぎて体は反応しているし、「好き」を近くで聞こうとしているのか肩に乗っている遼太の頭が頬や首をざわつかせる。
「友也は俺が好き?」と聞かれて「好き」と答えたら「そうだよな、全然好きとか言わないしお前、体だけの関係かなって心配になってたんだよ、俺はっ!あー安心した、さっさとヤって帰ろうよ!」と言われ、言葉の意味を理解するのを戸惑っている内に下を脱がされて作業テーブルの上に押さえ込まれた。
いや、ちょっと待てよ…、今の好きの言わせ方はかなり問題があると思うけど?
それより、作業テーブル突っ伏したままで後ろからするのって雑なんだけど?
性急すぎて焦り気味な俺の後孔に遼太のモノが押し当てられてズプズプ埋め込まれていく。
奥まで入り少し苦しい、苦しくて身を捩っていると「嫌か?これ、早く帰りたいって言うからさ、前からするか?」と聞かれて頷いた。
もう門限には間に合わなそうだし…と思いながら身を起こすと、何故か作業テーブル上で仰向けあおむけにし挿れようとしてくるから聞いた。
「ちょっと待って、なんで、ここでするんだ?」
「床の上は寒いかなと思ってさ。」
すごく恥ずかしいんだけど?と躊躇っている内に挿入されて抽挿が始まり、コートの袖で顔を隠していると「続き、好きの続きを言って」と聞こえてきた。
揺さぶられながら「好き」を何度か口にしていると「やっぱ、床でしよう」と降ろされた。
寒いけど床の方が距離が近くて良いよな、やっぱり今日の遼太は挙動不審。
顔を近づけて聞かれる「友也、好きの続きは?」「…好き」、何度も言わされる「好き」に頭が痺れてきた。
繰り返される抽挿で体が蕩けている、「好き」を言う都度に遼太がキスをしてきて抽挿も深く激しくなる。
「好き」を言う都度…、きもちいい…!
遼太の体を引き寄せて、痺れた思考で「好き」を何回も何回も言い、グズグズに蕩けた箇所を擦り合わせていると快楽で震えてきた。
イきそうなのと、イキたいので息が上がる、気持ち良い場所を擦り付けずにいられない。
遼太?遼太も気持ち良いのかな?
彼に悪い癖があるとしたら、発情しきった顔を見るのが好きなコト…!
どんな風に俺が見えているのか…!!
…!!……!……!!!!!!!
………!!…ぁ………!!!!!!!
……ぁ!…………………!
「すき…っ!…ぁ、あぁ…!!!!!」
蕩けた腹の中も、白濁した体液を吐き出した先も、熱く合わさる唇、霞む目の中に映る遼太も全部が気持ち良い。
俺は気持ち良かったけど、人のイク顔を見るのが好きな遼太は当然イっていない。
一緒にイクようにしようよ、好きだけどマイペースなんだよなぁ…。
俺をイかしてからが勝負たぜみたいなスタイルは止めようよ、遼太が思っている以上に1回イった俺は冷めている。
まあ、言わないけどさ。
結局、遼太に付き合って帰るのが遅くなり母親に怒られたけど、バレンタインだからしょうがない。
副会長がトチ狂って俺に告白したのもバレンタインだからしょうがない。
遼太が挙動不審だったのもバレンタインだからしょうがない。
普段言わない「好き」をたくさん言ったのもバレンタインだからしょうがない。
バレンタインが面倒くさいなと思うのは俺の性格だからしょうがない。
この後、「好き」を言う重要性が分かった俺は「好き」を良く言うようになった。
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