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第137話

 (なか)をかき混ぜられるのは気持ちいい、あえがせるのはもっと好き──空良談。  日頃ののんびり屋さんが、エッチの最中は時としてオラオラに豹変するのも、才能が開花したといえるのかもしれない。 「あのね、内証だよ? 先輩はねちっこく奥を突いてあげるとしがみついてきて、可愛いの」 「朝っぱらから、えぐいノロケ方をすんじゃねぇ!」 「ちい兄ちゃんに幸せのお裾分けをしたいのにケチんぼ……あっ、昨日の放課後ぶりのハニーちゃんだ、おっはよう!」    同じ制服姿の群れが一斉に校門をくぐっても、当麻ひとりがスポットライトを浴びているように光り輝いて見える。  空良はベランダの手すりから身を乗り出して、ぶんぶん手を振った。それから、恋人に朝一番の笑顔を届けるために昇降口へと走っていく。    その背後で邪悪な笑い声がくぐもる。ネバーギブアップ。それが、おにいちゃんズの最近の合言葉だ。  フラれたあともくすぶりつづける恋情と〝エロ奴隷よ再び〟をそれぞれの原動力に共同戦線を張って、あこぎな作戦を展開していく。  と、いうのは方便にすぎなくて、大和には独自の思惑があった。  首尾よく空良を奪還したあかつきには、簀巻きにしたタケ兄の目の前で番ってくやしがらせてやる。くく、うひ、ふわぁはっはっは! ──笑いこけたあげく嘔吐(えず)くあたり、ポンコツの名を返上するのは当分先の話になりそうだ。    夏本番を思わせる陽射しが校庭を白く焼く。昇降口の手前で重なり合ったふたつの影は、全世界に向かって誇らかに、こう宣言しているようだ。 「ラブラブだぜ、イェ~イ!」。     ──了──

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