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第1話*
気付いたら、おれは拘束椅子に縛り付けられていた――。
***
「ん……」
まどろみから目覚め、松岡稔 はやや寝ぼけながら時間を確認しようとした。
ところが、手を伸ばそうとした矢先、ガクンと何かに引っ張られてしまう。
「えっ……?」
動けない。
ハッとして自分を見下ろしたら、何故か素っ裸の状態で椅子に座らされていた。両脚を大きく開かされたまま肘掛けに拘束されており、恥ずかしい部分が丸見えになっている。両腕も椅子の後ろで固定されていて、ほとんど身動きできなかった。
(な、なんで……?)
一体どうしてこんなことになっているんだろう。稔は必死にこうなる前の出来事を思い出そうとした。
確かバイトが終わったから一度家に戻って、部屋のドアを開けたら、後ろから急に……。
「目覚めたか?」
顔を上げたら、見慣れた人物が自分を見下ろしていた。
「あっ、聖司 さん」
反射的に胸が高鳴り、声も明るく弾んでしまう。
相楽聖司 。稔より二歳年上の綺麗な男性だ。初めて出会ったのは大学のサークル勧誘の時だったのだが、一目見た瞬間何故かビビッと来てしまい、「お試しでいいのでつき合ってください」と告白したら、「ふざけてるのか」と一蹴されたのをよく覚えている。
だけどそれでも諦める気になれず、それどころかますます燃えてしまって、一年かけてしつこくアタックしていたらとうとう聖司も折れてくれたというわけだ。なので、今はれっきとした恋人同士である。
お互いに自宅の合鍵を交換し、好きな時に自由に行き来していいことにしているから、聖司が自宅にいるのはおかしくないのだが……。
「……って、なんでこんなことするんですか。解いてくださいよ」
こんな風に椅子に拘束されているのは、どう考えてもおかしい。
「なんで解く必要がある? そうやって縛られるの、大好きなんだろ?」
「あうっ……!」
近付いてきたと思いきや、聖司が手にした鞭を振るってきた。ピシッと小気味のいい音が耳朶を打つ。
続けざま何度か鞭で打たれ、稔はほどよい痛みに呻き声を漏らした。
「ふん……さすがド変態の稔だな。こうやって叩かれても反応するのか」
「え……あ」
ふと視線を下半身に移し、かあっと頬が熱くなる。
稔の股間は既に天井を向き、赤黒い色に充血し始めていた。直接触られてもいないのに鞭で叩かれただけでこんなに反応してしまうなんて、いやらしいにもほどがある。「ド変態」となじられても否定できない。
「それにしても、お前にこんな被虐趣味があったなんて最初の頃は気付かなかったな。道理で何度罵倒されても諦めなかったわけだ。このドM野郎が」
「う、それは……」
「まあ、それでこそいじめ甲斐があるんだけど」
そう言って、今度は遠隔操作型のローターを取り出し、稔の秘所に押しつけてきた。
「あっ、あ……ダメ、そんなもの……!」
そう叫んだけれど、下の口は素直に玩具を受け入れ、ほとんど抵抗なく飲み込んでしまった。そのまま長い指でぐいっと奥深くまで突っ込まれ、稔は唇から湿った吐息を漏らした。
「あっ……はあ……」
こんな格好のまま玩具にいじめられるなんて、恥ずかしいことこの上ない。
けれど本音を言うならば、椅子に縛り付けられた段階でこうなるかもしれないとうっすら予想してはいた。ひょっとすると、心のどこかで期待していたのかもしれない。その証拠に、勃起している己は萎えるどころかますます元気になり、今や先端が下っ腹につきそうになっている。
「あとは……そうだな」
聖司は思いついたようにティッシュを一枚引き抜き、くるくると捩ってこよりを作った。ついでに手近にあった紐を掴んで再度近寄ってくる。
「せ、聖司さん……それって……」
「さすがによくわかってるようだな、ド変態」
ニヤリと笑ったかと思うと、彼は陰茎の根本をきつく縛り、作りたてのこよりを濡れた鈴口に深々と差し込んでしまった。
「ああ……そんな……」
「くくっ……いい格好だぞ、稔。ドM野郎にはお似合いだ」
「なんで今日はこんな意地悪を……」
「わからないのか? お前、身体は敏感なくせに心は鈍感なんだな」
何のことかわからない。聖司は一体何が言いたいんだろう。
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