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 「分かってんならコイツら止めろ!!」  「やぁよ」  「なっ」  素っ気なく答えて、ミフユは淡々とグラスを磨き上げていく。  ゲイバーに来ているのはそっちの方なんだから、救ってやる義理もないというものだ。  「そんなことよりボトルの一本や二本入れなさいよ、枝豆ばっか食ってないで」  「くそ……とんだセクハラバーだ……」  ビール!とやけくそに頼んでくる伊吹のオーダーに「はいはい」と適当に答え、冷蔵庫を開ける。瓶ビールの中身をグラスに注ぎながら、キャストに揉まれている旧友をちらりと横目に見た。 (不思議な感じだわ……伊吹ちゃんが目の前にいるなんて)  再会することなんて、ないと思っていた。  彼の、怒りっぽい顔と喋り方も、シンプルなスーツを纏う締まった体も、ほとんど変わらない。  八年前にタイムスリップした気分だ。……自分のほうは様変わりしているけれど。  「おい如月……どっか他に場所ねぇのかよ? こんな騒がしいトコじゃおちおち話もできねえ」  注いだビールをカウンターに置いて、サービスのつまみを添えると、ミフユはふんと鼻を鳴らした。  「閉店後にでも時間取ればいいでしょ? アタシだって皆の前で物騒な話なんてしたくないわよ」  「おま……じゃあ俺ぁ閉店してから来ればよかったじゃねぇか!」  「知らないわよ。  ま、ちょっとくらいお店にお金落としていきなさいな?  うん。そうしましょ。こっちにもそれなりに旨みがなきゃ、相談には応じないわ」  「俺を誰だと思って!」  キレかけた伊吹を遮るように、モモが会話に入ってきた。  「ねえねえ! 師走さんってミフユ姉さんとどんなご関係なんですかぁ?」  「ああ?」

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