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 掠れた声を上げて、伊吹がのけ反る。  それを抱き込んで抑えつけながら、ミフユはがくがくと腰を震わせて精を放った。  「はぁっ……」  乱れた黒髪を撫でて、ミフユは眉を寄せる。  「……好きだ。好きだよ、伊吹……」  薬の効力か否か、二人の興奮はそれから数度の射精を遂げても収まりきらず、一晩中互いの体を求め続けた。 ・・・  朝陽が部屋に射し込む。  カーテンを閉めるのも忘れていたため、ひどく眩しい。  「うっ……」  目を手で覆いながら呻いた後で、ハッと覚醒した。  一糸纏わない己の姿を見て、昨夜の出来事を一気に思い出す。  「いっ!! 伊吹ちゃんっ!?」  がばあっと起き上がってすかさず隣を確認すると。  横になって、悠々とスマホを弄っている彼の姿があった。こっちも全裸だ。  「朝っぱらからうるせぇな。聞こえるよ」  「よかった……居た」  まだ伊吹が居たことにほっとしながら、すぐに青ざめる。  「ごっごごごごごめん!!」  昨晩しでかしたことを思い出して、ミフユは寝転がる伊吹に飛びかかった。  「うおっ!」  「大丈夫!? ごめん、ほんっとうにごめんなさい! 痛いとこない? ないと思うけどお尻は無事!?」  「だからうるせぇって!」  「あいだっ!」  スマホの角で額を殴られる。  布団に転がって悶えていると、伊吹は仰向けに寝がえりを打ってミフユを見もせずに言う。  「心配しなくてもどこも怪我なんかしてねぇ。……ただ」  伊吹は、チッ、と舌打ちして眉を顰める。  「……一服盛られたな。クソが、気付かれてねぇかと思ったがバレてやがった」  あの異様な興奮状態は、やはり薬物によるものだったのだろう。  「遥斗が渡してきたボトルかしら?」  「そうとは限らねぇが、可能性はじゅうぶんにある。  意識の混濁、動悸、性感増幅……【禁じられた果実】の特徴とよく似てやがらぁ。  【EDEN】がヤクの流通に一役買ってるってんなら、そこのホストが現物を持ってても不思議じゃない」  「じゃ、【禁じられた果実】をお酒に混ぜられてたってこと?」  「だろうな。依存してなきゃいいな。お互い」  伊吹は機嫌悪そうにしながらも、大したことのないように言う。

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