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「あらぁん、分かるぅ!? そうなのお~!」
訊くんじゃなかったとすぐに後悔したが時すでに遅しで、キャメロンは手を組み、天を仰ぎながらうっとりと語る。
「イブも近いじゃない? 今年は何してあげよっかなーとか、どんなプレゼントにしよっかなーとか、そして如何にめくるめく性夜にしけこもうかとか考えてたら全然仕事が手につかな」
「さっさと働け!」
「あいたぁっ!」
げしぃっとぱつぱつのドレスの尻を蹴りつけると、野太い悲鳴が上がった。
「やだ、ママってば意外とすぐ暴力に走るのよね。
そういえばこれもザーヤク時代の名残りなのかしら?」
「アンタがいくら押しても動かないからでしょーが筋肉ダルマめ……」
「そう考えたら、このグラサンも相当胡散臭いわね」
もはやモップを放り投げてルンルンし始めたキャメロンは、ミフユがかけていたサングラスを奪っていった。
「ちょっと! 返しなさいよ、せっかく買い直したんだから!」
潜入作戦のときに無くしたのを、やっと新調した物だ。なかなか値が張ったので急いで取り返そうとするが、ひょいひょいとかわされる。
返せと追いかけるが、キャメロンは軽やかにかわしながらまるで聞く耳を持たずに、空中で頬杖をついた。
「ザーヤクといえば、最近来ないわねえ。
ママの彼ピ」
あやうくずっこけるところだったが、すんでのところで踏みとどまる。
心臓をバクバクさせながら違うわ、と否定してキャメロンを睨めつけた。
「用もないのに来るわきゃないでしょ。付き合ってないんだから」
伊吹はおそらく、組のほうで今後の作戦を練っているのだろう。
黒幕の目星くらいつかなければ、ここに来る理由はない。
ええ?と声を上げるキャメロンの隣から、モモがにゅっと顔を出してきた。
「でもそれって、なんだか寂しくない?」
モモがマスカラの濃い目をぱちぱちさせながら椅子を磨き上げる。
「せっかく再会できたんでしょう? なのに用事がなきゃ会いもしないの」
「そうよそうよ」と反対側から首を突っ込んできたのはパピ江だ。
「向こうが来ないならこっちから行ったらどうですか?」
「組事務所にか」
「じゃなくて、『店に来て』って連絡すればって話!」
……まずい。話好きのオネエたちに包囲されつつある。
このままじゃ思うところを洗いざらい吐かされてしまう。
「だからそんな仲じゃないって――」
「でも、師走さんは絶対ミフユさんのこと特別に思ってますよね」
と、口を挟んできたのはアキだった。
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