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 けれど、最後まで理性が残っている。  伊吹を害するようなことだけはしたくない一心で、尋ねた。  「挿れていい?……今日は、薬にやられてるわけじゃないけど。アタシでいいの……?」  「……ばか」  担がれていない方の足で軽くミフユの腰を蹴った伊吹は、普段はきつい目をわずかに緩めて言った。  「俺だってお前に挿れられてぇんだよ。  さっさと来い、美冬」  「……あは、男らしー」  止まっていた腰をぐっと前に押し出して、当てていた肉茎を伊吹の中に突き立てる。  ずぶぶ、と自身に抵抗を感じながら中を割り開いていくと、肉茎がどろりと溶けそうなほど熱く、ぬるついた肉管に包み込まれた。  「く、ぁあ……っ!」  「……すっご……っ」  くらくらと飛びそうになる意識をどうにか呼び戻して、浅く腰を揺らす。  伊吹の中は、突然ねじ込まれた異物に驚きおののきながらも、その形に馴染もうとうねる。  そのうねりに快感を与えられながら、ミフユは味わったことのない幸福感に浸されていた。  「伊吹んなか、温かい……すごい、気持ちい」  「み、ふゆ……っ」  じっとりと汗ばんだ額を撫でてやって、唇を掠め取る。自分を受け入れるので精いっぱいの伊吹をいたわりつつ、尋ねてみた。  「動いていい……?」  「ん、ゆっくり……っ」  言われたとおりゆっくりと腰を引いて、またゆっくり押し戻す。  「ぁ……っあ……!」  ぬぶぶぶ、と根元まで押し込んだところで一度止まって、伊吹の体を強く抱き込んだ。  「美冬……」  熱で潤んだ瞳を向けられ、どくりと鼓動が鳴り響く。  「なぁに、伊吹ちゃん」  自分を『ミフユ』だと受け入れてくれるのはもちろん嬉しいが、それとは別に、やはり寝所で本当の名前を呼ばれるのは格別に感じる。  腰を揺すって一度大きく突き上げると、伊吹は声を震わせてしがみついてきた。  「そ、れ、やめろ……っ」  ミフユは微かに笑っただけで聞き入れず、深い抽挿を続ける。  「あ、ぁっ、ん……!」  (伊吹って、抱かれるとこんな風になるんだ……)  男らしく整った顔が赤らみ、濡れた唇から熱い息が零れる。  荒い呼吸とともに漏れる声は低く艶めいていて、ますます劣情を煽られた。  「可愛い、伊吹……っ」  「待っ、もっとゆっくり、あっ」  決して暴走しないようにと自制心を働かせてはいるけれど、段々とリミッターが外されていく。

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