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第7話

 会長はいつも以上に俺を、まるで性処理道具のように扱った。  喉の奥まで会長のモノで埋め尽くされている。呼吸が困難だ。でも、口いっぱいに広がった劣情を煽る匂いがたまらなくて、股間がじわじわと熱くなってきている。 「ぅ、っぐ、んぅ、っ」  モノが引き抜かれたかと思ったら、再び中へ戻ってくる。会長は俺の顔を荒々しい力で掴みながら、そんな動きを繰り返した。そしてその度に喉奥に先端が強く当たって、何度も小さく嘔吐いてしまう。  これが罰か。  正直、ただの友達だと言っておけば許されると軽んじていた。  それとも会長は、俺の言葉や態度から、その中に隠れた劣情を見つけ出していたのだろうか。  まだ自分でもそれが劣情なのか何なのか曖昧なのに……。 「余計なことを考えてはいけないよ。悠。しっかり反省しなさい。自分の体で。自分の心で」 「んん、ん、むぅ……っ」  苦しい。こんなの嫌だ。本当に死んじゃいそうだ。息が上手に吸えない。この感覚、楓くんにプールに引き入れられた時と似ている。  でも似ているだけで、あの時とは決定的に何かが違う。  会長の吐息が間欠的なものへと変わってきた。銀髪を乱暴に毟り掴まれる。 「ふぐっ、ぅうっ!」  突然最奥に会長のモノがぶつかって、そして会長は俺の後頭部を押さえ付けながら吐精した。 「んんん〜〜……っ! んぅ、ぅ〜〜……!」 「全部っ……飲み干しなさい……っ」  会長はそう言うけれど、精子は勝手に喉を流れて胃へと落ちていく。わずかに気管へ入り込んでしまった液体は俺を咽させた。辛い。頬を涙が伝っていく。床にパタパタ音を立てて滴るものは、一体どこから出た水なのだろう。 「んぐっぅ……」  ゆっくりと口からモノが引き抜かれていく。しかし咳き込む暇すら与えられず、再び頭を掴まれる。 「綺麗に掃除しなさい」  目の前には、白濁に濡れた陰茎。短く返事をして、それを一滴残らず舐め取った。そっと視線を送ると、会長は満足そうに微笑み、自らが腰掛けるベッドの上を顎でしゃくって示す。 「さあ。寝て」    ーー会長は、神様だ。神様が、俺を自らの「配偶者」として選出してくださったのだ。    あの日は曇天を稲妻が切り裂くような悪天候だった。雨が酷すぎて教会へ行くことを禁止されたほどだ。しかし夕方ごろになると母は、夕飯の材料が無いから買い物に行くと言い出した。それを聞いた瞬間俺の心に不安が浮上して、だけど父がそれを代弁するように、だったら俺もついていく、と言い立ち上がった。悠は危ないから、家で待っていなさいと。  中学生だった俺は広い一軒家の中で、窓を撃つ雨を眺めながら、独りで両親の帰りをずっと待っていた。  結論として、両親は帰ってこなかった。     突然固定電話が電子音を奏で始めた時の、心臓の異常な飛び跳ね方を、俺はこれから先ずっと忘れないだろう。  その電話は会長からのものだった。もっとも、当時は会長のことは存在を認知しているだけの、顔も声も知らない人だったのだけれど。会長は俺の両親が交通事故に遭った旨を淡々と告げ、自宅まで車で迎えにきてくれた。  俺は専属の運転手が走らせる広い車の中で、不安に苛まれた。知らない大人に、どこへ連れて行かれるのか。そして両親が交通事故に遭ったという事実が受け入れられなくて、混乱した末に泣いた。その時は会長のものであると知らなかった大きな手のひらが、俺の頭をそっと撫でた。  連れてこられた場所は、県病院だった。  両親は、薄暗い病室のベッドで、二人並んで横たわっていた。ずっと一緒に暮らしてきたのに、ついさっきまでちゃんと歩いて喋って生きていたのに。呆気なく抜け殻になっていた。目も当てられないほどぐちゃぐちゃな状態で。  悲しむより先に、遺体から目を背けてしまった自分が悔しかった。  そんな時、会長は立ちすくむ俺の背中を摩りながら、静かな口調で告げたのだ。 「悠のご両親は、幸せな場所へ旅立っていったんだよ」 「死とは、残された側は寂しく、孤独に感じるものだ。しかし死にゆく側に焦点を当てて考えてみて欲しい。死後の世界は、天界なのだから。必ず幸せが約束された世界なんだ」 「悠は、ご両親に幸せになって欲しいだろう?」 「確かに一般的に考えれば、早すぎる旅立ちだと思えても仕方ない。だけど。幸せの訪れに早すぎるなんてことは有り得ない」     会長の言葉の数々が、バラバラになってしまっていた俺の心を繋ぎ止めてくれた。テープで貼り合わせるように。  会長はその後、身寄りのない俺を助けてくれた。ちょうど高校に進級するタイミングであったこともあり、学校の近くのアパートを借りてもくださった。  そしてその頃。会長に、週末に教会に行くのをやめて、これからは私の別荘に来るように、と言われた。  会長にーー神様に選ばれた人間になったのだ。

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