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ふたなり
コンビニで新作アイスをゲットして、ウッヒッヒって感じ。早く食べたいなぁ。こっち抜け道だったはず。にょわあああああああ!!ビックリした。建物の影から黒い物体が動いたんだもん。悲鳴を外に出さなかっただけでも褒められる事だと思う。
よく見れば、ふぅふぅと息苦しそうにしてる。
額に手を当ててみれば熱くて、死んじゃうこの人!!
救急車呼んだら病院に一緒に連れて行かれた。僕この人知らない人なんだけどなぁ。
気づけば新作アイスは溶けてた。しゃーないかぁ。溜息と一緒にゴミ箱に捨てた。ご褒美に買ったのに。
待合室に待たされてボッーっとしていると、スーツ姿の男が声をかけてきた。
渡された名刺には、僕も知ってる会社でこの人はそこで秘書をしている小野町さん。
倒れていたのは社長の愛染寺さんだって。俺は近所の大学に通う時田ですって自己紹介して、帰りたいって伝えると車で送ってくれた。小野町さん笑顔なんだけど断れなかったよね〜。
大学もあるし風呂入ってぐっすり寝たよ。朝寝坊したけど、講義には間に合った。全力で走った甲斐があったよ。
いつもの様に大学終わって家に帰ろうと門から出たところで、時田くんって聞こえたから振り向いた。
高級車の横で立っているスーツの人が手をあげて居たけど知らない人だったから、人違いだろうと思ってスルーして歩き出したら、手を掴まれて君だよって言われた。
「貴方はどちら様です?僕は知らないですよ?」
「1週間前に救急車呼んでくれたでしょ?」
「うーん。小野町さんならわかるんだけどなぁ。やっぱり貴方は知らないです。」
一回見たら忘れるわけが無いくらいのイケメンなんだけど、知らないなぁ。
「あ、もしかして倒れてた人?」
「そうですよ。思い出してくれた?」爽やかな笑顔が、顔面の暴力が半端なくて目を開けてられない。免疫のない俺には恥ずかしくて無理だよ。掴まれた手を離して欲しいのに、余計に力が入った気がする。ちょっと痛い。
「愛染寺さんだっけ?元気になった様で、良かったです。無理はダメですよ!それではさようなら。」元気になったのなら、食べれなかったアイスも報われるかな。400円したけどね。
帰りたいのに手を離してくれないし、なんならそのまま車に乗せられて、高そうなホテルのレストランで向かいに座らされてる。なんて強引な人だ。出てくる野菜もお魚も美味しかった。
お肉に乗ってる白い塊がチーズで、美味しくなかった。食べてくれると言うので、チーズの塊をつけて愛染寺さんにあげた。大きな口に突っ込んでも嬉しそうに食べてた。チーズ好きなんだろうな。チーズが付いてないお肉は美味しかった。
周りの人がこっちを見てた。わかる。わかるよぉ。この人はカッコいい。スーツ姿もかっこいいしね。できる男って感じがする。後ろに流して固めてる髪形は俺がしても似合わないんだろうなぁ。けど色素が薄いのかな?髪は焦げ茶だし瞳も茶色だ。綺麗に食べる人だなぁ。ホークとナイフって使わないから、見様見真似で使ってみるけど、箸で食べる方が楽だな。
大学の話や、趣味の話をしてゆったりとした食事は美味しくて楽しかった。
家族の話は気まずくなったけど仕方ないよね。いつもの事だから慣れた物だ。
デザートも美味しかったし、さぁ帰ろう。今度こそさようならだ。
次はどこ行こうって?救急車のお礼ならもう十分です。
いつの間にかお刺身の美味しいお店を教えてもらって次はそこに行こうって話になって、連絡先を交換した。
「お刺身楽しみにしてますね。おやすみなさい。」アパートの前でさようならした。
おやすみって言いながら頬の撫でられて、額にキスされた。恥ずかしくて急いで部屋に入ったよ。イケメンは何をしても許される意味が分かった気がする。イケメンずるいよね。いつまで経っても心臓がドキドキしてうるさいんだもん。
起きたら、おはようってメールが来てて、またキスを思い出してドキドキした。
僕おかしいんだよね。ふと愛染寺さんを思い出すとドキドキするんだよ。講義の間もたまに思い出してドキドキして、愛染寺さん豆にメールをくれるからその度にドキドキしてる。
街で見かけた猫の写真送ったら、犬の写真が帰ってきた。モフモフはやっぱり可愛い。ドックカフェ行って癒された事をメールしたらずるいって言う。愛染寺さんは犬派みたいだ。将来、おっきな犬が飼いたいんだよね。モフモフの毛皮を抱きしめて寝るのが夢。愛染寺さんが見るのは良いけど、飼うのはダメって。やっぱり世話が大変なのかなぁ?僕できると思うんだよ?
中々タイミングが合わなくて1ヶ月ぶりに見た愛染寺さんはスーツ姿じゃなくて、僕と同じパーカーとジーパン。
僕も同じパーカーとジーパンなのに、カッコよく決まらないのは足の長さなのか?愛染寺さん186cmも有るとか、何を食べたらそこまで育つんだろうね?僕はギリギリ160cmですけど?
抱き締めるとちょうどいいって言う愛染寺さん。抱き締められると凄く嬉しくてドキドキが止められない。顔が近づいてきてキスされそうなタイミングで、僕のお腹の虫が盛大に鳴いた。
穴があったら入りたい。顔を見られたくなくて愛染寺さんの胸から離れられなくなったよ。
以前話に出たお刺身の美味しい店に行くって言われたら、恥ずかしかったことなんてどっか行ったよ。愛染寺さんの腕をグイグイ引っ張って車に乗り込んだ。
刺身の盛り合わせのイカもタコもハマチも美味しくて、ほっぺたが落ちるかと思ったよ。サバの味噌煮も、スダチをかけた鯛の塩焼きも美味しかったぁ。また来たいけど、ここ遠いから車がないと無理だなぁ。次はどこ行こうかって聞いて来るけど、僕とお出掛けして良いのかな?僕は会えるのが嬉しいからいいけど、愛染寺さんは忙しいのに、また倒れちゃうよ?心配してくれてありがとうって言うけど、ちゃんとわかってるのかな?また救急車呼ぶのやだよ?
それからは1週間か、2週間ごとに愛染寺さんとお出掛けした。愛染寺さん忙しいから毎週日曜日に休めないみたい。休みの日はお出掛けに連れて行ってくれる。愛染寺さん美味しいご飯のお店いっぱい知ってるから凄いよね。デートみたいに連れて行ってくれて、手を引かれて散歩して女の子だったらイチコロだよ。でも僕は男だから勘違いしちゃいけない。俺には人に言えない秘密があるから恋人は作れないんだ。でももし秘密がない体だったら愛染寺さん恋人になってくれたかな?わかんないや。
愛染寺さんと無性に会いたくなる時がある。また倒れたらダメだから、僕から会いたいとは言わない。恋人なら言えるのかな?寂しいって許されるのかな?ボーッと愛染寺さんの事考えながら歩いてたら、人にぶつかってしまった。慰謝料払って言われてどこか知らない所に連れて行かれた。怖くてブルブル震えちゃって、涙もポロポロとこぼれ落ちて止められない。払ないなら誰かにでも助けてもらうか?って言われて、でも愛染寺さんしか思い浮かばなくて電話しちゃった。すぐに来てくれた。抱きしめてもう大丈夫って背中を撫でられて安心した。ぶつかっちゃった人は、真っ青な顔してもう痛くないから大丈夫って言って他にも何か言ってたと思うけど、それよりも愛染寺さんに逢えたことが嬉しくて、愛染寺さんの顔をボーッと見てた。
初めて愛染寺さんのお家に行ったけど、すーーーーーーっごくひろい。お部屋いくつ有るんだろう?テレビ台の所に前に行った水族館のぬいぐるみが置いてあった。色違いで僕はピンクで愛染寺さんは水色。小野町さんが着替えを用意してくれて、今夜は泊まってくださいと笑顔で言うけど、やっぱり小野町さんの笑顔は断れない。断っちゃいけない気がしてしまうのはなんでだろう?ここは愛染寺さんの家で小野町さんはちゃんと別に有るって帰っちゃった。
そうなると二人っきりな訳で、急に恥ずかしくなっちゃったよ。
後ろから抱きしめられて、愛染寺さんの匂いと体温で安心する。首にかかる愛染寺さんの息がこそばくって、変な声出たよ。恥ずかしくて顔を見られたくないから、愛染寺さんの胸に顔を押しつけて隠した。急に抱っこされて落とされないように愛染寺さんの首にしがみついちゃった。やっぱり愛染寺さんいい匂いがする。今度は僕の方が首の匂いをクンクンしてたら、犬になった気分だなぁと思ったよね。そのまま寝ちゃった。
チャプチャプ水の音がして何だろうって目を開けたら、愛染寺さんに膝抱っこされて、愛染寺さんも僕も裸でお風呂に入ってた。裸見られた!?あ、あ、あぁごめんなさい。汚い物見せてごめんなさい。小さい時から家族に僕の体は汚いから誰にも見せるんじゃないって言われてたのに。震えてる僕をギュッて抱きしめて大丈夫って背中を摩ってくれてる愛染寺さん。
やっと息ができるようになって楽になってきた。涙を拭ってくれてる手があったかい。
「僕ね、生まれた時からオチンチンとお尻の間に女の子の孔が有るの。子宮も有るんだって。お父さんもお母さんもみんな、僕を気持ち悪いって・・・ヒクッ・・・だから・・ごめっ、ごめんあさい・・汚いの・・みせてごめんっごめ」
「陸!!もう大丈夫だから。もう謝らなくて良いよ、俺は、陸が好きだから。今のままで良いんだ。怖かったろうに救急車を呼んでくれて、なんでも美味しいって嬉しそうにご飯を食べて、モフモフが大好きな陸が大好きなんだ。」
こんな僕の事を愛おしいって瞳で訴えてくる。
えへへ、幸せだなぁ。
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