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好奇心だった

本当にただの好奇心だった。 あいつはこの国の第3王子。俺は魔道具が大好きでただ魔力が多いというだけの平民。 いろんな偶然が重なり、学園に通うことになった俺と同学年になったというだけの関係。 教室も違うし、学園内ですれ違っても声を掛け合うような気軽な同級生という事は立場が許さなかった。 それが夏のある日崩れた。 空き教室で、昼食を取りながら本を読もうと行った先にあいつがうずくまっていた。 駆け寄ると、息苦しそうにこちらを睨みつけて唸るように出て行けと言った。 「馬鹿か、放って置けるかよ」 近づき水筒を見せながら水を飲めるかと問うたが、お前が悪いと言いながらあいつは俺を押し倒した。 くそと悪態をつきながら、乱暴に口を塞がれた。 媚薬を盛られ、逃げ込んだ空き教室はほぼ誰も来ないような場所。 そこにノコノコと弁当と本を持って現れた俺。 同意も説明もないままに、悪態を並べながらも震える手で俺を愛撫し性急に開いていった。 何度も何度も腰を打ち付けられ、こちらももう何も出ないくらいには、中に出され続けた。 俺と王子は最悪なことに魔力の相性が良すぎた。 薬が抜け終わっているだろうに、なぜかお互いにこの行為をやめたいと思えないほどにいつまでもこの快感に溺れていたいと思うくらいに良すぎたのだ。 俺は日々図書館で本を読み漁ったり、魔道具を作ったり引きこもりに近い学園生活を送っている。 けれど、学園に来るまで魔道具の要である魔石を集めるために魔獣を狩ったりしていたのだ。 多少は落ちただろうけれども、それでも体力は有り余るほどあった。 そんな俺が気絶するほど、貪れたのだ。 媚薬は恐ろしいと目が覚めてから一番に思った。 性に目覚めてしまった思春期の俺と王子の関係が始まったのは致し方なかったことだろう。 1日と開けずにお互いに貪りあった。 一月経った頃にふと思ったのだ。 あいつが俺の中に吐き出した魔力を俺の中にためておいたらどうなるのかと。 すぐに俺に馴染んでしまうあいつの魔力を、俺の腹の中で貯める場所を思い描き、それをどうにか出して魔道具に使えないかと。 毒や媚薬が王子の周りで溢れかえっている状況もあって、指輪を作った。 ドリュメスという名の魔獣から取れた赤子の頭ほどの大きさの魔石から作った指輪を王子に差し出した。 「ドリュメスの魔石はあらゆる毒の無効、精神攻撃の無効の効果がある。指輪をつけた状態でいろんな実験をしてみたけど、排泄と一緒に出てくることを確認した。」 だから安心しろとこれからは普通に食事も楽しめると伝える前に、怒鳴られた。 自分で実験するなと。 なんの毒を使ったのか、どんな状態になるのか、いつそんな危険なことをしていたのかと、あいつは俺が気絶するまで、ベッドで聞いてきた。 逃げれない状況で吐かせるとか、あいつは鬼畜か。 ドリュメスの魔石の効果の中で一番目をつけていたのは、王子が吐き出した魔力を俺の中に貯めることができるという点だ。 ドリュメス自体、体内に魔力袋というものが存在していて、それがいわゆる亜空間収納バックの材料になる。 どこかの内臓の皮膚が大きくなるにつれて、袋が出来上がる仕組みらしく、小さな狩りやすい個体には存在しない。 10日も森の中を彷徨ってようやくドリュメスを狩れたと思ったのに、袋がなくて泣きながら家に帰ったことを思い出す。 王子と俺の爛れた性活の他に変わったことがある。 2年に上がった頃だ。 寮の部屋が同室になったのだ。 1ルームでベッドも机もタンスもあって、ギッチギチの空間だった俺の城が、寝室と勉強部屋と衣装室と、ちゃんとそれぞれが独立した王族専用のあいつの部屋に移動させられたのだ。 「ほぼ同室と変わらない生活をしていたんだ、トリーの部屋を埋めておく必要性が無いだろう。」 それに今年から平民も増えるからという理由だった。 それと王子も魔道具を一緒に習うことになった。 去年は剣や魔法の攻撃特化の授業を受けていた王子が、急な進路変更に先生方も戸惑ってはいたようだ。 第3王子という立場は兄たちのスペアというわけでもない。 国のために騎士となってゆくゆくは騎士団長かと思われていたのだ。 それが魔道具という研究職への変更は多少、物議があったようだ。 俺はなんとなく噂しているのを聞きかじった程度なので詳しくは知らない。 俺と一緒に洗濯機を作った王子。 洗浄、脱水、乾燥、多機能な洗濯機を作り上げた。 「こういう機械があったら便利だよ。」と、妙に確信を持って案を語る俺の話を片っ端から覚えていて具現化していく王子。 素材選びや、稼働の仕方などの意見をだし、じゃあ魔石はどの魔獣があっているかと試作していき、夏頃に完成できたのだ。 平民でも使えるように、宿屋や居住区に設置案を出したら、いつのまにか至る所に置かれるようになっていた。 王子はやはり、王子だったのだと感心した出来事だ。 秋になり始め、寒さが出てきた頃。 どうしてかわからないが、俺は困ったことになっていた。 毎日のように王子と性生活をしているのにもかかわらず、お腹が空くように王子の魔力を欲するようになってしまったのだ。 学園で一緒に学んでいるのは俺と王子だけではない。 他の生徒も不人気な科目とは言え同じ教室に二十数人はいる。 そんな中ででも、ムラムラが止まらない。 どこにいても、だれといても、王子がいるからか? そんなわけがわからない状況。 とうとう限界がきて、寮の自室に戻るなり、王子を押し倒した。 泣きながら魔力を頂戴と、懇願しながら王子の口を貪った。 王子は俺が満足して眠るまで魔力を与えてくれた。 目覚めたときに部屋の中には、王族専門の侍医、魔道具協会長、そして、 なぜか陛下がいた。 「トリー、妊娠しているぞ」 あいつが言った言葉に、思考が追いついていかない。 固まり、呆然とする俺に説明をしはじめた。 いつからか、中に魔力を出したときに、俺に馴染むとは違う、どこかに吸収されていく感覚があったらしい。 それが、洗濯機を作り上げたあたりだという。 そして、その頃から俺が積極的に王子を求めだしたと。 不思議な感覚に囚われながらも、昨日の性行為中、狂ったように魔力を求め続けるおれのおかしさを感じ、専門家を呼んで妊娠を確認し、陛下に報告をしたと。 陛下も報告だけではなく、事実を見るために来られたようだ。 俺が王子の魔力を貯めるとどうなるのか? その好奇心が、子供を作るという結果を生みだしたのだ。 「ドリュメスが魔袋をつくるのは、子をなすためでもあるんだ。」 魔道具協会長が始めた説明に俺は顎が外れるくらいに、空いた口が塞がらなかった。 他者を捕食し、魔力を魔袋に溜め込んで子を孕む。 そして、その魔袋がある程度の大きさになると吐き出して放置する。 袋を食い破って出てきたドリュメスはまた、捕食を初めて大きくなっていく。 「妊娠が確認できた以上、私とトリーは王宮の離宮で生活をすることになる」 ドリュメスは食事で魔力を補えるが、俺達は性行為で補うしか無い。 それに、人間が生まれるかもわからない。 安全面と監視目的のために俺は王宮生活が始まった。 これからどうなるんだと、不安に駆られたのは新たな部屋につくまでだった。 王子の魔力を欲することしか、考えられなかったからでもある。 俺の定位置はベッドのみ。 起きては王子を求め、眠り、また起きては王子を求める。 それの繰り返しで、それ以外のことは何もみえてなかった。 王宮での性活が2ヶ月を経った頃。 「なにか、でるーーーーーーー!!!」 俺はただただ叫んで、ベッドの上で腹を抑えていた。 うんこを出したいような、それじゃないけどとにかく出したかった。 王子は風呂場に俺を連れていき、一緒に湯船に入った。 湯船というよりも、プールに近い。 王子の首に巻き付き駅弁スタイルにされ、背中をさすられながら、出したいと叫ぶ俺。 「出していいぞ、出せ!」 王子の号令に従順な俺。 ベッドの中で、言われ続けてますからね。 パブロフの犬です、ワン。 俺と王子の間に、ポンと出てきた袋。 半透明のなかには、ちゃんと人間の子供がいる。 それを確認した途端、深い眠りに落ちた。 猫が鳴いてる。 だんだんとそれが、赤子の泣き声だと気づいた。 俺は赤子を抱えるように横になり、その俺達を抱きしめて王子も横になってる。 俺が起きたことに気づいたのは、乳母の方だった。 授乳をしてやりたいが、いいかと。 乳母に預けようと体を起こすと、王子も起き一緒に赤子が乳を飲むのを眺めた。 「ちゃんと赤子だ」 俺のつぶやきに合わせて、王子も乳母も頷きかえした。 「髪は私だが、目はトリーだった。」 ソファは広いというのに、王子は俺を抱きかかえて座っている。 俺は赤子ではないという俺の言葉は無視され、お茶を飲まされ、菓子を食わされる。 王宮に住み始めてからの癖だというから仕方がないと諦めた。 それから俺と王子は結婚した。 同性婚は今までは貴族の政略結婚目的でしかなく、平民はできなかった。 教会がどういった愛の形でも認めるべきだと謳い、魔道具協会は同性でも子が成せると魔道具の価値を上げるために宣ったせいだ。 王族である第3王子が、同性相手に子をなした。 それらを認めるのは難しく、赤子は秘匿されるか、処分かという話も上がった。 それを教会が奇跡だと、奇跡は神が与えたと、神が与えたものを何と考えると詰め寄られた陛下。 王妃は教会長の三女だ。 しっかりと、神とはなんたるか教育を受けて育った。 その中でも奇跡という神秘がなによりも大好きな王妃。 王妃の鶴の一声、虎の一睨みで、俺達が第一人者として結婚をすることとして同性婚が成立された。 王宮の中のかなり奥にある今までとは違う離宮で、俺と王子と息子は生活を始めた。 子育てと魔道具づくりと研究ができるように新しく建てられたのだ。 今作っているのは、オーブン。 温度や時間も設定できて、温めもできる代物。 あと少しでできそうな気はするが、息子が呼んでいる声がするので。

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