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第59話(これからの為の作戦)

私は兄さんにさっき私達が話し合った覚えていない人の事を話した。 「覚えていない?」 「ああ、他の二人は覚えているんだがその一人だけ名前も顔も思い出せないんだ。ただ兄さんに紹介してもらった事は覚えているんだが」 「、、、紫の影響が強かったのはそいつと接するのが多かったからかもな」 「ぼくはそいつの名前も顔もちゃんと分かるけど嫌な感じはしなかった」 「ボクも紅先輩に紹介してもらったけど三人共ボクの事を好意的に迎えてくれたよ」 「オレも兄さんに紹介されたが覚えていないその人の印象は悪い感じはしなかったような気がするな」 他のみんなにも聞いたけどみんなその人の印象は良い感じみたいだ。 明さんは興味が無いのでどういう人間かもよく分からないと言っていた。 灰炉さんは会った事が無いのでなんとも言えないと言っていた。 (兄さんと特に仲が良い友達の三人に最後に会ったのっていつだっけ?確か三人一緒だった様な気がするんだけど、、、あ!) 「兄さん」 「ん?なんだ葵?」 「オレが三人に最後に会ったのは三人一緒の時だったんだが」 「三人一緒?俺はあの三人にそんな話しは聞いて無ねぇぞ?」 「すれ違い様に挨拶したくらいだからな。まぁ、その日にオレは石を投げられたんだが」 「あの日か、、、葵ちゃんが覚えて無いあいつが一番怪しいけど他の二人も何か関わって居るかも知れないな」 「紅どうする?」 白兄がそう言うと兄さんは何か考えてから凄く嫌な顔をした後に深く息を吐いてから言った。 「三人共見張る。ただ一番怪しいあいつは主に能力が効かない灰炉が担当してくれ調べるのが得意な紫と一緒に頼む」 「お兄様とか、、、分かったその方が良いだろうからな」 「ぼくも特に不満は無いよ」 「白はあいつ、、、お前に心酔してる奴を頼む。ただし、あいつと二人きりにはなるなよ?」 「わたしも弱く無いのだから何かあっても大丈夫、」 「二人きりにはなるなよ?」 「、、、はぁ、分かった」 「緑はもう一人を頼む。あいつは年下に甘い上に弱いから何も無いと思うがあまり二人きりにはなるなよ?」 「はーい!分かりました紅先輩!」 「黒と明先生は生徒達から葵の噂を誰から聞いたのか調べてくれるか?」 「生徒達に聞いて相手を突き止めれば良いんだろう?地道な作業になるだろうが葵くんの為だ頑張ろう」 「私の所には生徒はあまり来ないが個性的な子達は色々と良く来るのでその子達から何か聞いてみよう。葵に何かあったら暗が悲しむからな」 「悪いがみんな頼む。それから葵達は、、、」 兄さんは言うのが嫌そうに一旦口を閉ざした。 (兄さんのあの顔はものすごく嫌な事があった時の顔だ。そんなに言うのが嫌な事なのかな?) 「これを言うのは凄く嫌だが仕方ねぇ。葵達は囮として俺達とあの三人の前でいつもの様に接しろ」 「いつもの様に?つまり学園で居る時のあの顔をするなという事か?」 「そうだ」 「菫と暗は特に変わらないだろうがオレは他人が居ると顔がアレで固定されるんだが?、、、まぁ、囮だからな努力はするが」 「確かに葵ちゃん他の人が居るとあの顔に自然になっちゃうって前に言ってたよね」 「まぁ、それは葵が頑張って他人を意識しない様にするしか無いだろうな」 「お前ら二人も囮だからな?」 そんな事を話してると兄さんがいきなり私を抱きしめて来た。 「兄さん?いきなりは驚くんだが?」 「、、、あー!嫌だ!」 「っ!兄さん?」 「葵を囮にするのも嫌だがお前の素顔を他人に見せるのはスッゲー嫌だ!俺達だけのモノなのに!」 「兄さん、、、オレは舐められない様にあの顔をしてるんだが?」 「それでも!俺達だけの葵なのに!嫌だー!」 「兄さんが決めた事だろ?それにその作戦は確かに有効だから実行するんだろう?」 「そうだけど、、、俺の葵が、、、」 「、、、はぁ、オレの兄さんは紅兄さんしかいないんだが?それだけはずっと変わらずに紅兄さんだけのオレだろ?」 「、、、葵が久しぶりに紅兄さんって」 兄さんの機嫌は治った(むしろ元気になり過ぎた)ので話の続きをする。 (紅兄さんチョロいなって思ったのは黙っておこう) 「話を戻すがオレ達が普通に接するのはいつからだ?」 「お前が素を出しても変じゃねぇ時が良いからな、、、鈴が退院して学園に行く日が良いだろうな」 「オレが退院するのはいつなんだ?」 「病院の先生の話では無理をしないという条件ならば一週間後だという事だ」 「一週間か」 「葵達は鈴が退院するまでは今までと変わらずに過ごせ。他の奴らはさっき言った事を明日から頼む」 兄さんがそう言うとみんな頷いてくれた。 かなり遅い時間になっていたので入院している鈴の兄さんとその付き添いの私と兄さんと白兄以外は家に帰って行った。 兄さんと白兄はみんなの見送りに部屋を出て行った。 「今は夜か?」 「そういえば鈴の兄さんは今日の朝には意識をとり戻すと言っていたが、それよりも遅く意識が戻ったんだ、、、良かった」 「葵ちゃんの為ならそれくらいするよ?」 「、、、だが、あまり怪我をして欲しくない、、、今日は鈴の兄さんが居なくなるかも知れないと思って怖かった」 「うん、ごめんな?」 「ちゃんと目を覚ましたからもう良いさ」 「はは、葵ちゃんはカッコいいな」 「一週間後はあまり無理をしないでくれ」 「葵ちゃんが悲しむのは嫌だから無理しない様にするよ」 「本当か?」 「ああ、だから葵ちゃんもオレが居ない一週間は気をつけてな?」 「、、、ああ、、、、鈴の兄さん」 「なんっ」 鈴の兄さんが私に呼ばれて顔を上げようとした瞬間に私は鈴の兄さんの唇を奪った。 “チュッ” 「鈴の兄さんが一週間学園に居ない代わりに貰って行くな?」 「ッ~、、、本当にカッコいいな葵ちゃん。オレにも葵ちゃんに一週間学園で会えない代わりをくれないか?」 私達は兄さん達が部屋に戻って来るまで、この一週間が寂しくない様に唇を合わせた。

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