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第60話(疲れてたんだ)
鈴の兄さんが撃たれてから一週間たった。
(やだな~、もう放課後だ)
「葵、、、頑張れ」
「暗、、、ありがとな」
「二人共、大丈夫?」
私と暗は少し疲れた顔(虐めの片付けで疲れた)をしてそれを菫が心配しながら三人で兄さん達と約束している場所に向かった。
兄さん達と約束している場所は普段は人がほとんど居ない場所なはずなのに今日はチラホラと数人ほど人が居た。
(何で今日に限って居るんだよ!私この人達が居るなかで普段通りにするの無理だよ!あ、あの三人は兄さん達と何か話してる)
「葵ちゃん大丈夫?あ、手を繋いで行こうか?」
「良いんじゃないか?俺達も普段通りにするなら手を繋ぐくらい普通にやってるだろ。それに手を繋いだ方が少しは他人が気にならないんじゃないか?」
「、、、そうだな、頼む」
私は暗と菫の二人と手を繋いで兄さん達の元に向かった。
疲れてた私は普段は他人が居る時は絶対にしない事(手を繋いでいる事)をしている事に気づいてなかった。
この後の騒動も何も知らないで兄さん達の元に向かった。
紅視点
普段のこの時間は人が居ないはずのこの場所に数人ほどの人間が居た。
(やっぱりあの三人の中に黒幕が居るな)
「紅」
「なんだ鈴?」
「もう直ぐあの三人が来たぞ」
「そうか」
『鈴が放課後に退院するから会うか?』と言って放課後にこの場所で会うと言ったのはあの三人だけだ。
つまりこの場所に俺が鈴と会うのを知って居るのはあの三人だけのはずなのに普段居ない時間にこの人数がこの場所に居るのは誰かからつまりあの三人の誰かまたは三人に聞いたからだ。
あの三人は白と一緒にこの場所に来て俺達を見つけて声をかけてきた。
「おう、鈴!退院したんだってな?おめでとう!」
「静かにしろ、他の人も居るんだぞ?白銀様うるさい奴ですみません」
「、、、、。」
喋りながら(二人だけだが)こっちに向かって来る。
大きな声で鈴に話しかけた最初の奴は、赤木 縁完(あかぎ えんかん)という名前でいつも俺達を心配してくれる良い奴だ。
次に縁(縁完の事)を注意していたのは、時根草 夕(ときねぐさ ゆう)という名前で、、、白に心酔して居る奴だ。
最後にその二人にドン引きして少し離れて歩いて居るのは、花乃宮 剣聖(はなのみや けんせい)という名前でクールな奴だ。
剣(剣聖の事)は早足で先に俺と鈴の所に着いた。
「鈴矢もう大丈夫なのか?」
「ああ、無理しなければ明日にでも学園に行けるってよ」
「そうか、緑が心配していたぞ」
「へぇー、緑といつの間に仲良くなったんだ?」
「この頃よく紅の所に来るついでに近くに居る俺と話すだけだ」
そんな事を話して居ると他の三人も俺達の所に着いて鈴の退院を喜んでいた。
ちなみに、俺と鈴と白の他に一番下の三人は後から来るが姿を見せない他の奴もこの場所を近くで見張っている。
「兄さん」
「お、来たかあお、、、」
俺が振り向くと菫と暗の二人と手を繋いだ葵が見えた。
(あれ?なんか可愛い子達が居る?俺の目の錯覚か?)
「兄さん?」
「え?、、、葵?」
「ああ」
「、、、いや、何でもねぇ」
「そうか?」
「葵ちゃん、、、」
鈴の奴が『何、可愛い事してんの?』と小さい声で言っていたが俺もそれに同意した。
(葵?もしかして疲れて、、、ああ、疲れてるな。だから何の疑問ももたずに二人と手を繋いでるんだな)
「葵ちゃん、少し疲れてる?」
「何か疲れた顔してるぞ?」
「何かあったらちゃんとわたし達に言うんだぞ?」
「大丈夫だ。だが、もう少し撫でてくれ」
「っ~、、、」
「可愛い!俺の弟本当に可愛い!」
「やはり疲れているのだろう?そんな可愛い事を言って、、、頼まなくても撫でてやる」
「すまん、ありがとな」
葵の可愛い頼み通りに俺達三人が撫でて居ると葵が安心したようにふにゃっとした顔をして笑った。
可愛い葵に夢中になっていた俺達はそれを見た他の奴がどんな事を思うかその時考えていなかったのだ。
俺が誰にも見せたく無いほどの俺の宝は凄まじい威力を持っている事を忘れてその大事な大事な宝を可愛がっていた。
そのせいでかなり厄介な事になるとも知らずに。
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