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第8話

「あぁ…ん、し、しづ…ま」  焦らすつもりはなかったが、志津真は馴らすために、いつものように自分の物より先に指を威軍の中に差し入れた。 「先週より、狭いんじゃないか」  揶揄(からか)うように言う志津真だが、声に余裕はない。さしもの「声優部長」(かた)無しだった。 「あ、あ、も、もう…」  泣きながら、威軍は絶頂が近いことを訴える。 「行くぞ」  小さく、低い声でそう言うなり、志津真はしっかりと恋人の細腰を両手に抱え、下から奥へと突き上げた。 「!ぃや、あ…!」  恥じらいも無く、威軍は志津真の挿入と同時に声を上げて達した。たっぷりと吐き出した白濁した汁で志津真の腹から胸が汚されるが、気にも留めずに志津真は激しく腰を使い続けた。  威軍もまた、達して吐精したばかりなのに、奥を突かれる愉悦を過敏に感じていた。 「いいよ…、ウェイ」  それなのに、あの魅惑的な声で名前を呼ばれて、威軍は確かに背筋に電流が走ったのを感じた。その反射で体内の恋人の物を強く締め付けてしまう。 「ぁう!」 「はぁ、ん…」  先ほど達したばかりなのに、威軍は志津真に導かれたかのように、2人は同時に昇りつめた。 「ウェイ…」  抱き合ったまま、2人はもう一度ベッドに倒れ込んだ。続けざまの激しい絶頂感に威軍はぐったりしており、志津真は労わるように優しく汗ばんだ威軍の前髪をかき上げた。 「だい、…丈夫です。ただ、ちょっと待って下さい」  体内から抜け落ちた、愛する人の果実をもう一度味わいたい威軍だったが、それでも余りの激しさに少し休息が欲しいと思っていた。 「急がない。夜はまだまだ長いんだからな」  恋人を労わりながら、「声優部長」の本領を発揮して、志津真は甘く囁いた。  含み笑いをしながら、ゆっくりと威軍は身を起こした。 「水でも飲みますか?」  横になったままの志津真を見下ろすようにして、威軍は聞いた。 「いや。欲しいなら、俺が持ってくる」  そう言って起き上がろうとする志津真の胸に、威軍は手を置いて、それを制した。 「いいえ。貴方が不要なら、私も要りません」  そのまま、じっと志津真の優しい瞳を見詰めながら、威軍は微笑み、それから静かに愛しい人の胸に頬を寄せ、彼の隣に身を寄せた。 「離れている時間も惜しいので…」  そんないじらしいことを言う恋人に、志津真も破顔し、彼の髪に触れ、お互いの温もりを味わった。 「俺も…離したくない、な」  冗談めかして言うものの、決して志津真の言葉に偽りは無い。その言葉を噛み締め、幸せを感じながら、威軍はその造形の美しく、長い脚を志津真の脚に絡めた。 「慌てる必要は無い。俺の全ては、お前の物なんだから…」  求める威軍を抱えなおし、志津真は体の上下を入れ替え、仰向けに寝かせた威軍の上に伸し掛かった。  上から威軍の左右対称の精緻な美貌を観察しながら、志津真はこれまでに何度も感じた感動を再認する。 「キレイやな…。こんなにキレイで、優しくて、利口なウェイが、俺だけの物なんて夢みたいや」  確かめるように志津真は威軍の頬に触れ、顎を持ち上げ、唇を塞いだ。  すぐに威軍も素直に受け入れ、舌を絡ませ、両手を志津真の逞しい背中に回した。  息を継ぐために唇を離した一瞬、威軍が呟いた。 「夢じゃ…」  言いかけた言葉を待って、志津真は威軍の腰に腕を回したまま、美貌を見守る。 「夢じゃないですよ。私は、貴方だけのものです」 「!…最高やな」  感謝と共にキスを与えて、志津真は恋人を強く抱きしめた。愛しい相手が、そばにいてくれる、大切に思ってくれる、激しく求めてくれる…何もかもが2人には幸福だった。 「明日の朝も、昼も、夜も、全部俺たちのものだからな」  その後、2人の影は再び重なり、何度も繰り返し互いの愛情を確かめたのだった。

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