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第7話

 アルコールのせいで頬を朱く染め、(つや)やかな目つきになって、郎威軍は物欲しそうに恋人を見詰める。   そんな誘惑的な威軍を拒絶できるような志津真ではない。    いつしか2人は楽しく食事をしていたテーブルを離れ、寝室に移動していた。深く口づけを交わし、慌てたように互いを愛撫し合い、絡み合いながら2人はベッドに倒れ込んだ。 「おい、おい…」  性急な威軍に、今夜の志津真は笑いながらも身を委ねる。  仰向きに倒れた志津真の上に珍しく積極的に馬乗りになると、威軍は自分のクリーム色のワイシャツを、挑発するようにして脱ぎ始めた。    肌理(きめ)細かく、磨き抜いた象牙のように温かみのある白い肌。華奢ではあるが、惰弱ではない青年らしい筋肉質な体。何もかもが、理想通りに作られた芸術品のような郎威軍だった。その美しさを見せつけるような扇情的なそれは、まるでストリップショーだった。  それでも恋人が自分に夢中なのを十分に自覚している威軍は、安心して自分の淫猥さを見せつけた。こんなに淫らな自分であっても、この恋人なら自分を嫌悪したり、軽蔑したりすることは決してないと信頼しているのだ。  そして、妖艶な恋人の誘惑を、楽しむだけの余裕を志津真は持っていた。  威軍は真剣な表情のまま、志津真の日本製の高級なワイシャツを脱がせ、素肌に手を這わせた。そんな恋人を邪魔することなく、されるままに志津真は様子を見ている。  冷静に見える志津真の体温もまた、十分に高まっていた。鼓動も早く、期待をしているのが分かる。 「私が、欲しいですか?」  上から見下ろし、女王のように威軍が言った。しかし、それに動じる志津真ではない。 「ああ、欲しい。だが、それはお前も同じだろ?」  そう言ってニヤリとすると、志津真はぐいと腰を突き上げた。志津真の笑顔につられてか、無表情だった威軍も顔を綻ばせる。 「ああ、キレイやな…」  情欲に溺れた艶めかしい表情も捨てがたいが、ふと見せた優しい笑顔の美しさに、思わず志津真も心を奪われていた。 「お気に召しましたか」  褒められた礼のように、威軍は身を倒して濃厚なキスをした。  志津真はそのまま威軍を抱き寄せ、腹筋を使って起き上がった。さらに深い口づけを交わし、威軍は志津真のシャツをその腕から引き抜き、志津真は威軍のスーツのスラックスのファスナーを降ろした。  それを感じ取った威軍は、タイミングよく膝立ちになり、志津真の手を借りて腰からスラックスと下着を脱いだ。  準備を済ませると、2人は唇を重ね、舌を絡ませ、気持ちを高ぶらせていく。 「ん…、ん…」 「はっ…ん、う…ん」  口中からだけではなく、先走りに濡れた下半身からもヌチュヌチュと湿った音を響かせて、2人は幸せな愛の交歓を続けた。  そうするうちに威軍の慎ましかった性器は、志津真の手の中で猛々しく育ち、それに合わせて威軍は妖艶に身を捩らせた。 「志津真…、志津真…」  1番欲しい物を求めて、威軍はあられもない声を上げてしまう。  先ほど自分が志津真にされたように、威軍もまた志津真の下半身に手を伸ばし、脱がせて、中から待ち望んだ物を取り出す。  すでにそれは心得ていて、いつでも威軍の中へと侵攻を進める意欲が見て取れた。  余計なことを言わずに、志津真はベッドのすぐそばにあるサイドテーブルからお気に入りの催淫ジェルを取り上げると、たっぷりと手に取って、威軍の前と後ろに塗り込み始めた。 「あ…、あ、ん。…は…ん、うん…」  前からも後ろからも快感が迫って、威軍は精神が引き裂かれそうな緊張感を抱く。怖い…、でも、もっと…。 「や…、あ、…。ダメ…」  強すぎる快感に、美しすぎる威軍の身体が身悶えする。  倒れそうになる威軍を、志津真はしっかりと抱き、手の中に残ったジェルを自分のはち切れそうなものに塗り込んだ。これで、準備は完了だった。

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