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第18話

兎に角金雀枝(えにしだ)は加賀から離れたくて逃げたくて… 形振り構わず加賀を突き飛ばそうとした 突き飛ばそうとしてみたのだ… しかし―― 「ッ、金雀枝さん…っ!」 「やっ…うぅ”ぅッ、」 加賀を突き飛ばそうとした金雀枝の両手はあっけなく加賀に絡め取られ… 金雀枝は加賀に両手首を掴まれながら なおもその手を振りほどこうと必死にもがく… 「金雀枝さんっ!しっかりして下さいっ!!一体どうちゃったんですかっ、」 「嫌だ…っ、は、なし…、はぁっ…はぁっ、ンっ…ぅ、離して…ッ、」 ―――おかしくなる…このままじゃおかしくなる…っ! 加賀の甘い“血の匂い”が―― 金雀枝のなけなしの理性をチリチリと溶かして行き… 今まで出来るだけ我慢してきた吸血鬼としての“飢え”と“乾き”… そして本来なら直接血を吸わなければ今まで感じる事の無かった“発情”を誘発しながら 熱いうねりとなって耐え難いほどに金雀枝の身体を甘く疼かせ 精神(こころ)を乱していく…   「金雀枝さんっ!」 「ッいいから離して…っ!おねがい…お願いだからぁ…っ、」 ―――やだ…やだやだやだやだやだ…っ! 金雀枝の瞳から止め処なく涙が溢れだし… 半狂乱になりながら金雀枝が加賀から逃げようとその身を捩る… ―――やだ…、ッ、もう…嫌なんだよ…っ!    血を啜り…獣のように相手と交わりながら    身も心も絶望の縁に堕ちて行く様なあの感覚を味わうのはもう…もう…っ、     「や…、あぁあ…あっ…、ッ、あ”あぁぁあ”ぁあっ…、ッ、…っ!」 「ッ!?」 涙を流し…加賀に掴まれた手を振りほどこうと今まで必死に暴れていた金雀枝が 突然、ひと際甲高い悲鳴のような声を上げると暴れるのを止め… まるで糸の切れ人形のように急にガックリと肩を落とし、項垂れると そのままピクリとも動かなくなり… 「え…えにしだ…さん…?」 突然目の前で項垂れ――黙って動かなくなってしまった金雀枝に加賀は戸惑い… 躊躇いがちに加賀が金雀枝の肩に触れようとしたその時―― 「…ちょーだい…」 「え…?」 「…ちを…ちょーだい…?」 金雀枝がゆっくりと顔を上げ… 閉じていたその瞳を加賀に向け、そっと開く… 「…ッ!?」 その瞳を見た瞬間…加賀は信じられないもの見るかのように 開かれた金雀枝の瞳を食い入る様に見つめ―― その表情は驚愕で満ちる… 「金雀枝さん…目が――」 ―――きん…いろ…? そこにあったの普段… 新緑の森を思わせるような静かな碧色(みどりいろ)(たた)えた金雀枝の瞳ではなく… それははまるで琥珀を太陽に透かしたかの様に ユラユラと揺れなが金色(こんじき)に輝く金雀枝の瞳に加賀が心奪われ… もっと間近でその瞳を見ようと 吸い寄せられるかのように加賀の手が金雀枝の顔に伸びる… しかし―― 「…ほしい…?」 「ッ!?」 金雀枝の手がスッと加賀の肩に伸び――突然凄い力で加賀の両肩を掴むと その身体を高級そうな白いラグが敷かれた床の上に押し倒し―― 「――ッ!ぐッ、ぅ、」 その余りの衝撃に加賀の息が詰まり… まるで脳震盪(のうしんとう)を起こしたかのように揺れる視界の中で それでも加賀は咄嗟にその身を起こそうとするが―― 「だぁ~め。」 「ッ、」 そんな加賀の身体の上に、間髪入れずに金雀枝が跨ると 金色に輝く瞳で加賀を見下ろしながら金雀枝が妖艶に微笑む… 「ねぇ…かがくん…かがくんも――俺の事が…欲しいでしょ…?」 金雀枝が目を細め… ウットリと頬笑みながらピクピクと脈打つ加賀の首筋を指でツゥー…となぞり―― 加賀がそんな金雀枝の手をやんわりと掴むと 焦りと怒りが入り混じった瞳を金雀枝に向けながら口を開く 「ッ、貴方は…こんな時に一体何を言って…ふざけるのもいい加減にして下さい。  …怒りますよ…?」 「クスッ…か~わい~…いいよ~?怒っても…でも――」 金雀枝が加賀の耳元に唇を寄せ―― 熱い吐息と共に囁く… 「俺が今からする事に…  加賀君の怒る気力が残っていたら…だけど…」 「…ッ?」 金雀枝の舌が… ヌルリとピクピクと脈打つ加賀の頸動脈を舐めあげた次の瞬間 ガッ、、 「――――――ッ!?がっ…あ”ぁあ”ああぁああ”ああっ?!?!?」 加賀が抵抗するまもなく 金雀枝の牙が加賀の首筋の皮膚を食い破り―― 加賀の絶叫が広いエントランスホールに響き渡った…

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