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第37話

翌朝、桂と楓がやって来たらしいが、我らの声を聞き、そのまま帰ったと後から聞いた。 克敏はそれを聞くと顔を真っ赤にして我を睨み、しばらくは自重して下さいと怒ったように言った。 「自重したら、克敏の腹が空くだけぞ?」 「え?約束が果たされたのですから、もう大丈夫なのでは?」 「我の活力だけでも生きてはいけるが、やはり与えられる質が違う。それに、克敏は我のが好きであろう?」 最後のは克敏にしか聞こえぬように、その耳元で囁いた。 「主様っ!!」 「怒っていても克敏は可愛いのう。」 そう言うと抱きしめた。 「主様、楓さんと桂さんがいるのですから、おやめ下さい。」 我の手を外そうとする克敏に、 「好きならくっついていたいって思うのは当たり前だと俺は思うから、お方様はもっと甘えたらいいと思う。」 桂がぼそっと呟いた。 「え?」 我らの目が桂をまるで異なるモノを見るかのように見つめた。 「祖神様、お方様、私達も昨夜、婚姻の儀を致しました。」 楓が桂の腰を抱く。 「しました。」 桂が楓に促されて、こちらも顔を真っ赤にしながら報告する。 「ほう?楓の事を好きにしたのか?」 「してないっ!」 桂が顔を真っ赤にして言う。 「楓が…」 克敏が無言の圧力をかけてくる。 「桂さん、楓さん、おめでとうございます。 克敏がそれを感じさせぬにこやかな笑顔で二人を祝うと、桂が実はと口を開いた。 「俺、祖神様達の婚姻の儀の証明人としての責任、果たしてないかも…」 「桂、どう言う事?」 「ここから出る時、この婚姻を認めるか?って聞かれたんだけど、何も答えなかったんだ。」 「え?」 「だって、祖神様を取られて悔しくて…ただ、否定はできなかったから黙ったままで出て来ちゃったんだ。」 「そうか…されど答えなければ黙認という事になる故、大丈夫であろう。」 「よかったぁ〜!」 心底ホッとしたように桂が笑顔を見せる。 しかし克敏と目が合い、真剣な表情になった。 「お方様…ごめんなさい。俺、ものすごく嫌な気持ちにさせた。本当にごめんなさい。」 そう言って頭を下げる。 「桂さん、いいんですよ。もう終わった事。これからは私とも仲良くしてくださいね?」 そう言って、克敏が桂の手を握る。 「はい!」 そう返事をする桂を見て、微笑んだ。 二人が帰るのを見送っていると、トンと横にいる克敏の手が当たった。 それをぐっと握ると克敏が我の胸に体を預け、その髪が我の顔をくすぐる。 克敏…我の唯一無二の者。 握った手に力を込める この手、絶対に離さぬ。そう、永久に…。

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