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第七章・6
「おやすみ、七瀬」
「お? おやすみ」
「どうした」
「だって、七瀬、って名前呼んでくれるなんて」
おかしいか、と丈士は寝返りを打って七瀬を抱き寄せた。
先ほどまで火照っていた身体の名残が、まだ熱にある。
丈士は、これまでで一番自然に七瀬を抱いた。
悪にのぼせることもなく、情に引き攣ることもなく。
「いつもは、お前とか、悪魔とか呼ぶのに」
「そう言えば、七瀬は悪魔だったっけ」
忘れてた、と笑う丈士の表情は素直だ。
皮肉めいた嘲りとは、無縁だった。
「な、もう一回ヤろうか」
「いいの?」
二人は、そっと口づけあった。
舌を出し絡ませると、唾液がとろりと流れ出る。
七瀬の濡れた顎を、丈士は舐めて清めてあげた。
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