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第1話
今から一年前の事。僕達はいつものように一緒に朝食をとっていた。向かい合わせに座り、ハムエッグとサラダ、食パンにカフェオレとごく一般的なメニュー。
いつもと何ひとつ変わらない朝だった。
お互いに何時に帰る? なんて会話していた直後、テレビから流れてきたニュースに僕達は食事していた手を止めた。
「昨日行われた国会決議にて、同性同士の婚姻を認める法案が可決され、来年6月にも施行されることが正式に決定致しました」
今……なんて!? あまりの衝撃に、僕は勢いよく立ち上がると、カフェオレが入ったカップを床に落とした。
「陽向」
「優真……」
僕、望月陽向 。彼、高橋優真 は恋人同士。まさかこんな日が来るなんて夢にも思わずに今日まで生きてきた。
僕にとって優真は特別。かけがえのない存在。何故なら僕達には家族がいない。あの日、そう十七年前、僕と優真は児童福祉施設で出会った。
まだ僕が六歳、優真が七歳の時。
「……なた……陽向」
優真が僕を呼ぶ声に思わずハッとする。
「大丈夫か? 怪我してない?」
あ、そうだった……。足元を見るとカップは割れ、カフェオレが見事に床に零れている。
「大丈夫……今片付けるね」
既にニュースは終わり、エンタメコーナーに切り替わっていた。僕は軽く頭を振り現実に戻る。
「陽向、とにかく後でちゃんと話そう……」
朝は忙しい。優真は高校を卒業して直ぐに今の会社に就職。会社員として毎日頑張っている。僕は美容院で働きながら通信で勉強し、二年前ようやく国家試験に合格。まだ下っ端ながら終電近くまで働いている。
現在、優真二十四歳、僕二十三歳。普段と変わらない朝が、一本のニュースで大きくが変わろうとしていた。
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