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ボランティアサークルの参加者は他人に気づかいのできる優しい人が多い。 けど、サークルの居心地は最高とは言えない。 中学でも高校でも、面接でネタになるからって参加してくるやつが気に入らなかった。 そいつらはまぁ点数稼ぎに来てるから、めんどくせー言いながらもとりあえずは活動してた。 問題は大学。 サークル参加者ではなく、問題起こして学校から強制されて、就活のための実績作りに来るやつ。 やる気ないし活動も適当だし、最悪。 こんなの実績になんないでしょってサークル代表の藤城くんに文句言ったら、ちゃんと来るだけでも立派らしいよと言われた。 レベルが低すぎる、納得いかない。 小さな町の桜祭りの運営ボランティアに参加した。 また一人、問題起こしたやつがサークルに送られてきた。 どんな問題を起こしたのか知らないけど、見た感じワルそうなやつではない。 今までさんざん見た感じダメなのが来てたから、なんか安心。 「奈良場真です」 名乗ってきた声も表情もまともだった。 名前って生まれたばっかの将来どうなるかわかんないときにつけられるのに、真は真って感じがする。 真っすぐ、真剣、真っ当、そんなイメージ。 なんなら誠でもいける。 俺は名前登一だけど、妃って苗字のほうがしっくりくるらしい。 俺『クソ野郎』が口癖なのに妃がイメージとかないだろと思う。 真はあまりしゃべるタイプじゃないようだ。 けど、つまんねーとか思ってなさそう。 問題起こすようには見えなかった。 同学年だから一緒に活動してと藤城くんに頼まれた。 世話係たまにやるけど、やりやすそうなやつに当たってラッキー。 お祭りボランティアはお祭り気分も楽しいし、売ってる飲み物を水分補給と言いながら好きに飲めるのが地味に嬉しい。 さっそくウキウキしながら飲み物もらいに行ったら、そこのスタッフのおっさんがクソ野郎だった。 俺を見てゲスな顔で笑いやがる。 「今どきの若者は骨格が違うよなぁ。そんな細くて重いものとか持てんのか?」 客には愛想いいんだろうね、裏で自分の地位確認して自己をたもってるんだろうねクソが。 あんたとは骨格確かに違うだろうけど、俺災害復旧で土砂の除去とか荷運びとか、感謝されるくらいにはできてるからね? 腹立つけどクソ野郎と同じトコには落ちたくない、軽くかわそうと思ったら。 「あのさぁ」 低い、不機嫌極まりない声と同時に、後ろにいた真が俺の横に、クソ野郎の前に進み出てきた。 あっ、そう言えば真、問題児だった! 今までの問題児も現場ともめて、世話係がなだめてたのを思い出す。 俺は場が険悪になる前におっさんに言い放った。 「俺、結構肉体労働してるから大丈夫ですよ。運ぶものあったら言ってください」 真とクソ野郎が反応する前に飲み物取って真にも一本渡して、逃げた。 真が重度の問題児じゃなくてよかった、ギリセーフ、だよね。 一人問題を起こしたらサークル全体の評価が落ちる、注意したら真は素直に反省した。 クソ野郎とやり合っても勝てそうなのに、よく我慢したなって内心褒める。 真は反省してるのか少し気落ちした顔で、注意した俺を評価してきた。 「妃、見た感じより男らしいな。最初女だと思ったんだ、悪い」 ……ああ。 問題児だから気にしてなかったけど、素質あるじゃん。 背が高い、185くらいか、ついでにガタイもいい。 顔もいい、真って感じ。 そう言えばさっきもめたの、クソ面倒なことさせられたとかじゃなくて、俺が攻撃されたから。 俺のために。 俺を守ってくれそう。 俺は弱いから、 イイコトしてあげるから、俺のこと守って欲しい。

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