賢一は暴れたい衝動を俺を抱くことで解消していた。 俺は抱かれることでどうしようもない不安を解消していた。 高校二年で同じクラスになって、背が高くて誠実そうで迷いのない目をした賢一を、俺は時期を見て落とした。 俺にはセックスが必要で、賢一もたぶんセックスが必要。 行為は命綱で外すことができないもの、利害が一致して常に確保できたのは好都合だった。 これのおかげでお互い、脱線寸前の高校生活をうわべは普通に過ごせていた。 賢一は最初は衝動をそのまま俺にぶつけていたけど、慣れるとだんだん優しくなっていった。 俺はセックスできれば激しくても優しくてもどうでもいいんだけど、賢一は俺を愛してるみたいに抱いてくる。 俺は抱いてくれるお礼に、愛してるみたいに抱かれた、キスはしないけど。 なんとなく、キスはセフレにはしないものだと思ってて、絶対しないことにしてた。 キスできる関係に賢一がなりたがってるって、ある日気づいた。 セックスの後で賢一の口もとを見る。 キスしたいという気持ちに、なれなかった。 俺がエッチしたいって言えば賢一は、高校では部活の後、大学ではバイトの後、かならずその日に家まで来てくれた。 それでも、キスしたくなれない。 なんでキスできないんだ。 セフレじゃない関係に、なれるかも知れないのに。 俺は、 不安を解消するんじゃなくて、 不安から解放されたい。 解放してほしい。　 そういうなにかを探してる。 先に進みたい。 賢一の優しさが性欲満たすための手段だと思ってるからダメなんだ。 セックスがからんでも優しさは優しさ、セックス抜きでも賢一は俺を最優先してくれる、はず。 賢一はずっと優しかった。 俺は賢一の中に求めるものを探した。 けど。 お互い今がつらいと、手っ取り早くセックスで問題を解決した。 先のことなんか考える前に、一瞬楽になって日常に戻る。 そしてまたつらくなって、セックスをする。 全然前に進まない。 今とは違う未来が見えない。 優しさになけなしの良心が痛んで、 賢一とは終わりにした。