15 / 28
9-4
「あのさ、真。キスとかしていい?」
今ならキスできるのかなって、思った。
けど、そう言えば。
真は俺とキスしたいって思うのか?
俺に対して性欲ないんだよね?
そこで真はまた、予想外の言葉を返してきた。
「別に聞かなくても。俺、妃のこと好きだから、そういうのされたら、喜ぶだけだし」
喜ぶんだ、迷惑じゃないんだ。
なんでだよ。
でも、いいならしちゃうよ。
真の口もとを見上げたら、なんだかキスしたくなるような色気があった。
男らしくて力強そうな横幅の広い下くちびる、やわらかそうで少し淡い赤。
俺、相当過激なコトしてきたけど、恋とかするのは初めてだ。
キスしてもいいのかなって、ドキドキする。
ホントに真が好きだな。
どうしよう、真を間近で見ていられるだけで満足だ。
ドキドキしすぎてうまく体が動かない。
真の肩に手を置いて、ぎこちなく身を乗り出して、自分のくちびるで真のくちびるにふれた。
思った通りやわらかい。
真、見た目は威圧感あるけど、心の中はこんなふうにあたたかい。
ぎこちなかったから体勢がもたなくて、すぐに体を離した。
はじめてキスができて、俺は感動してた。
今までしたくても、絶対にできなかった。
あきらめてたから。
いびつにゆがんだ迷路の中、同じところを一人でグルグル回ってた。
そこから急に、真にこっちだよって手を引かれて、抜け出せた、みたいな。
想像してなかった、こんなの。
どういうことなの。
こんな世界線、知らない。
クソすぎる俺が、こんな世界に来れるなんて。
ともだちにシェアしよう!