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朝に図書館ボランティアの準備をしようと集会室に行ったら、代表の藤城くんがスマホを手に話しかけてきた。
「今日、奈良場くんも図書館来るって言ってたよね?」
言いながらサークルのSNSに届いたダイレクトメールを見せてくる。
真は今日来るのか個人のSNSはあるのかっていう、問い合わせみたいなやつ。
こんなん送ってくるの、たぶんこないだ翔麻がなついてるからお茶しようって言ってきた翔麻の母親だよね?
「奈良場くんには今日は休んでもらって、図書館、僕らで様子見ようと思うんだけど」
「あーうん、心当たりあるし、俺が様子見るから。そんな問題ないと思うよ」
ネットだとか電話だとか、警察ですよと言われても簡単に信用できないこのご時世。
思慮深いぶん心配性な藤城くんは、年上なのに時々俺に相談事を持ちかける。
翔麻の母親は常識ないけど、悪質ではない、敵意がないから。
前に翔麻を図書館に置いてったの、スゲー邪魔とかじゃなくてちょっと待っててくらいの感覚だったと思う。
「よかった、心当たりあるんだ! ねぇこのこと、妃くんにまかせても大丈夫?」
真面目で優しい藤城くんは、強そうではなかったからセックスしたいってならなかった。
俺はサークルをまとめる藤城くんを信頼してて、いたってふつうに会話してる。
だから藤城くんも俺のこと信頼してて、相談とかしてくるんだろう。
気づかなかったけど、よく考えたらそう、信頼してるから信頼されてる。
俺だってふつうのこと、ちゃんとできる。
おかしいところがあるのはなんでだろう。
「うん。真にも言っとくし、今日行ってみて、あと報告するから」
「あー、ほんと助かる。よろしくね」
ニコッとしてから藤城くんは、図書館の準備を手伝ってくれる。
ふつう。
これがふつう。
上に立つとか下手に出るとかない、思いもしない。
理想のふつう。
真にも上とか下とか気にしてない、したくない。
なのに今まで無理してやってた部分が、真との関係にイヤでも関連づけられてる。
ふつうにしたい。
好きな人とのふつうってどんななの。
こわいのヤだからって優位に立たなくていいやつ。
イイコトしてあげるから安心させてよってしなくていいやつ。
不安なんかなにもなくて、無理やり特別なホルモン分泌する必要のないやつ。
ふつうのキスとかふつうのセックスってどうすればできる?
こんなこと考える時点で、きっともう、ふつうじゃない。
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