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博物館前の広場。
展望台になっているそこからの景色は、来る途中の坂道から見えた視界とは全然違った。
180°は見渡せる街の夜景。
暗くてどこがなんなのかよくわかんないけど、奥には高いビルの群れ、手前には低い住宅地。
外灯遠くてちょっと暗い場所のベンチに腰を下ろした。
なにを確認するわけでもなくぼーっと180°の夜景を眺める。
なんかさ、これだけでストレス解消になりそう。
世界はこんなに広い。
たくさん人がいるはずなのに、ここから人がひとりも見えない。
俺、時々世界の終わりみたいにヘコむの、意味あんのかな。
見えないくらい小さなことに思えてくる。
今度不安になったら真にここにつれてきてもらおう。
そうしたら真に心配かけないで元気になれる気がする。
俺って今まで、すごくせまい世界にいた。
実際せまい部屋のせまいベッドが俺の居場所だった。
だけど真が、バイクでここにつれてきてくれた。
……つれてきてくれて、ありがとう。
真がことりと缶コーヒーを置く音で、ふとわれに返って真を見た。
真も俺を見て、なにか言いたそうな表情で俺の肩に腕を回す。
キスかな。
俺がしていいかって聞く前に真からしてくれるの、はじめてかも。
俺のくちびるに、真のくちびるが優しく触れる。
好きだな。
真が好き、キスも好き。
目を閉じて、真の背中に両手を伸ばして、背中に触れる。
大きい背中、安心する。
くちびるが離れて、また触れる。
離れて、触れる。
俺が踏み外しても、真は待っててくれる。
俺のところに来てくれる。
なぜかそのことが頭に浮かんだとき、
触れた真のくちびるがスッと間合いをつめるように、
俺の中に近づいた。
クロスした真の口もとが、
せかさずに待っている気がした。
俺が吹っ切るのを。
まだ全然吹っ切れていない。
このままじゃ俺はまた熱さに驚いて、真を押し返そうとしてしまう。
ムリだ、わかんないもん、言いわけ。
真が俺とセックスするプラスの理由。
俺が拒否ってるの伝わってるはずなのに、真の舌が俺の中に入ってきて、ゆっくりと動く。
どうしよう、熱い、くすぐったい。
ほら、速攻エロい気分になっちゃったじゃん。
ホント、ダメだ、困る。
そっと真から離れようとしたけど、逆に真は俺を強く抱きしめて、さらに奥に入ってきた。
この強い何か、
これは真の気持ちだ。
今まで真は俺がキスしたいって言ったらいいよって言ってくれた。
そのくせ俺が困ったら止めてくれた。
それは真の優しい気持ち。
止まらないこのキスは、ただの好きより大きくて激しい気持ち。
言葉で好きと言われるよりも、強く真っすぐに伝わってくる。
こんな俺を、こんなに好きだと思ってくれている。
真ももしかして、熱いキスでエロい気分になるのかな。
俺みたいに全部飛ばして最終地点、ではなくて。
好きだと思って好きだと言って両思いになって、
デートしてキスをして好きがあふれて最後にたどりつく、神聖なところ。
……あれ?
俺も真とだけ、この道をたどってる。
真も同じ道をたどって、優しいキスじゃなくて、エロいキスをしてるのかな。
どうなんだろう、ちゃんと知りたい。
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