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第24話

 帰りの飛行機も予定通りに離陸、そして僕らは定刻通りに無事帰国した。 「ほら、はな。着いたよ」  所要時間、片道12時間の少し長すぎる空の旅。最初のうちは窓の外を眺めてはしゃいでいたが、いつの間にか眠ってしまった華を揺り起こす。  日本との時差はマイナス9時間ほど。実際の移動時間は12時間ほどなのに、日本に着いたらまだ夜の9時過ぎだった。  時差のせいでぼんやりしていたら、 「おーい。木田」  聞き慣れた声が僕の名前を呼んだ。 「よお。おかえり」 「ただいま」  あの頃からジョンに負けないくらいの体格をしていたが、今はあの頃のジョンを越えている。母校の中学校の体育教師をしている村田はがたいがよく、ただ身長がひょろりと高かっただけのジョンとは全然違う。  一方の僕はと言えばたいした成長を見せず、身長も170センチちょうどで止まってしまった。 「ほら、はな。おいで」  村田がそう言って華に手を伸ばすと、華は両手を広げて村田にしがみつく。ひょいと華を片手で抱え上げる村田。  そんな村田の腕の中で、小さな華は眠ってしまった。  村田は僕らを親子二人だけで送り出し、ちゃんと迎えに来てくれたお節介焼きだ。 「ジョンにさよなら言えたか」 「……ん」  村田に言われて返事をしたのはいいけど、僕はちゃんとジョンにさよならが言えたのだろうか。 「そうか。よかった」 「うん」  村田にはそう言ったが、そう言えば今回の旅行ではジョンがいない現実と向き合えただけだ。 「そっか……」 「ん。どうした?」  よく考えてみれば、僕はまだジョンに『さよなら』を言ってないし。 「いや、なんでもない。ありがとな。村田」  それでも村田に礼を言うと、村田は曖昧に笑った。  動物的に勘が鋭い村田だ。ジョンと向き合えただけで、まだ納得できていない僕のことも見抜いているんだろう。 「今夜は店開けないよな。明日の夜、また来るから」  それでも大事なところには触れず、父さんが開業した喫茶店まで送ってくれた村田はそう言って、軽く手を振って帰って行った。

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