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第36話

 初めて村田と話したのはいつだったか、僕がこの町に越して来たその日のことだったように思う。  あれは小学校一年生の夏休み。一学期が終わってすぐにこの町に引越してきた僕は、新しい学校生活よりも一足先に夏休みをこちらで迎えた。 「なあ。おまえ何年生?」  その夏休み初日。家の前でトラックから降りた瞬間に駆け寄って来た少年、それが村田だ。 「あ、えと。一年生」 「お。おれと一緒じゃん」  前歯が一本欠けていて、思わず笑ってしまったっけ。それをどう思ったのか村田も笑って、その夏は村田と一緒に過ごした。 「おーい。ラジオ体操行こうぜ」  村田は毎日朝一番に迎えに来て、ラジオ体操にも一緒に行った。 「こいつ、木田。転校生。都会から引越して来たんだって」  まだ通っていなかった学校のプールにも誘ってくれて、すぐにこの町にも馴染めた。  学校が始まってからは、クラスの人気者の村田に事あるごとに誘われた。都会育ちの僕は皆に着いて行けなくて、クラスでは転校生なのに目立たない存在になってしまったけど。 「木田。学校行こうぜ」  それでも村田は誘ってくれた。いつも一人でいないようにって気遣ってくれて。ジョンと三人で遊んだ時もいつもそうだ。  だからきっと、村田は僕らの関係に気づいていたと思う。それでもそのことには一切触れないでいてくれた。  思えばジョンとの思い出を作るまで、僕のそばにはいつも村田がいた。それはとても自然なことで、そのことに今まで気づかなかった。  だからといって村田は一番の親友で、このスタンスが崩れることはない。それでも村田の存在は本当に有り難くて。  村田がいなければ今頃、僕はどうなっていたんだろう。この閉鎖された町にも人にも馴染めずに、もっとネガティブな人間になっていたと思う。  村田がいたから僕は、どんな時でも淋しくはなかった。村田がいたからジョンがいなくなった後も普通に恋ができたんだ。そう思ったら一気に気持ちが吹き出した。  言わなきゃ。村田にありがとうって。そうすればジョンのこととも、きちんと向き合える気がした。  ジョンはもうこの世にいないのに、あまりにも僕が封印を解いた過去に執着しているから。  村田は心配してくれている。ジョンはもうこの世にはいない。だからこそ、もっと前向きにならなきゃいけない。

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