天王寺の言葉の意味はよくわからなかったけれど、声を聞きたいというのは、自分にとって危険なリクエストだったのではないかと、愛撫が再開されてから気付いた。 「……ましろ、……、ましろ」 「っ……、ぅ、ん、ふぁっ……ちー様……っ」 　全身を唇で辿りながら熱のこもった声で何度も名前を呼ばれると、直接的なところを刺激されていなくても、頭がぼーっとしてきて、おかしくなってしまいそうだ。自然と息が乱れ、もっと彼のことが欲しくなってしまう。 「…お前は、どこもかしこも綺麗すぎる」 「んっ、そんな、こと……あっ！」 　横たわるましろの全身を鑑賞するように見下ろした天王寺に、健気に身を擡げ、ずっと刺激を欲しがっていた中心を握られて高い声が上がる。 　擦ってもらえると思ったのに、からかうようにするりと一撫でしただけで手は離れ、代わりに与えられたのは足の付け根へのキスで、焦れて勝手に腰がうねった。 「痕をつけてもいいか？」 　もっと刺激がほしくて、何を言われたのか深く考えず頷く。 「んっ……！」 　際どい場所を音を立てて吸われると、勃ち上がったものが震えて、先端から蜜が溢れたのを感じた。 「……、肌が白いから、目立つな」 　つうっと付けた痕をなぞられ、とうとう我慢ができなくなる。 「ち……さま……っ、」 「ん…？触ってほしいのか？」 「は、…はい、そこ……っ、さ、わって…くださ…」 「だめだ」 　必死の思いで訴えたのに、すげなく断られて言葉を失った。 　泣きそうに眉を下げたましろを見て、何故か天王寺はふっと笑う。 「お前の困った顔、可愛くて、もっと見てたくなる」 「ぅ……、い、意地悪…しない、で、」 「泣くな。ちゃんと、気持ちよくしてやるから」 「っぁ……」 　欲しがっていたそこに吐息がかかり、熱いものに包まれた。 　突然の強い刺激に跳ねた腰を、動くなと押さえられて舐られる。 「はっ……ァ、あっ！ん、あ、あぁっ！」 　もう既に限界まで昂っていたため、唇で何度が扱かれただけですぐに弾けてしまい、ぐったりと脱力した。 　だが、息を整える間もなく、天王寺の長い指が後ろを探る。 「っ…………、は、…そこ、は、」 　ぬるりと押し込まれた指が何故濡れているのかと考える余裕もなく、感じる場所を擦られて、受け入れる準備をされて。指が抜かれた頃には息も絶え絶えになっていた。 「まだ少し早いが……、俺も余裕がない。……いいか？」 　足を抱えながら確認されて、まだ息が苦しかったけれど、欲しい気持ちの方が強くて、頷く。 「ぁ…、」 　熱くて大きいものに拓かれていく感覚に、思わずぎゅっと枕を握りしめた。 「う……、ち……さま……、」 「っ……は……っ、きついな…。もう少し、力抜け…」 　待ち構えていたようにきゅんと食まれて眉を顰めた天王寺が、途中で腰を止める。 　早く全部欲しくて、懸命に息を吐いて力を抜くと、ずずっと奥まで入ったのがわかった。 「っぅ…、」 「辛くないか？」 「ちーさまでいっぱいで、嬉しい…です」 　腹を撫でると、くっと息を詰めた天王寺が中でびくんと跳ねたのを感じ、ましろも体を震わせる。 　正面からするのは初めてだった。 　身体を折り曲げるようにされるのは、少し苦しいけれど、天王寺の表情が見られるのは嬉しい。 　気遣いを忘れるくらい、もっと夢中になって欲しくて、手を伸ばす。 「ちー様を……もっと、ください……」 「ましろ……っ」 「あ！っあ、あぁっ…」 　感じる場所を擦り上げながら、奥まで貫かれ、ましろは悶えた。 「ぁん、あっ、ぅ、それ、きもちい、です…っ、」 「ん…、これ、か…っ？」 「～っぁ！あん、あっぁ、」 　望むようにされて、声が止まらなくなる。 　気持ちがよくて、天王寺も同じだったらいいと思った。 「ち……さま、も、こ、こうしているの、っん、きもちい、ですか？」 「いいに、決まってるだろ…っ、」 「あ、あっ！」 「ましろ……っ、」 　切なく呼ばれて胸が詰まり、その背をぎゅっと抱き締めた。 　天王寺に求められていることも、ましろから求めてもいいのだということも、ただ幸福で、涙がこぼれる。 　ずっとこうしていたい。 　だが、気持ちとは裏腹に、身体の方は限界だった。 「ァ、ち、……さまっ、…っあ！あん！……も、もう……っ」 「っく、……っああ、ましろ……」 　激しく抉られた奥に熱いものを感じながら、ましろも最奥での快感を極めた。 　落ちてきた天王寺に強く抱きしめられて、互いに息は乱れたまま、それでもほっとして身を預ける。 「もう……離してやらないからな」 「っ……、はい。ずっと……、離さないで」 　望んでいた腕の中、ましろは喜びの微笑みをこぼした。