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1.つばきと楓
「どうする?俺をその辺のαと適当にやらせるか、それともお前が協力して発散させてくれるか…」
「何をばかな…」
「いいよ…お前なら。それに俺、物分かりの良い執事は大好きだよ」
香坂家は古くから輸入業を代々経営する名家だった。
そして、楓が専属で仕えているつばきは、そんな香坂家の長男として生を享けた。
つばきは男でありながらも、母親譲りの艶のある黒髪と線の細い端正な顔立ちで、使用人でさえ毎日見惚れてしまうほどの美貌の持ち主だった。
そんなつばきが、Ωである可能性を考えるものは誰一人としていなかった。
それは、香坂家がα同士の結婚しか認めておらず、α以外の子供が生まれるはずがなかったためだった。
ましてや、通常は十五歳で訪れる発情期もつばきにはなく、月日のたった十八歳でΩだと判明したのは、ある事件がきっかけだった。
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