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第1話

「…今月も二人は清いままなのですね?」 原稿を呼んだ編集者が顔を上げる。 「だって、動いてくれないんだよ。」 暫し沈黙… 「動きませんか?」 俺は即答 「はい、動きません。」 またも暫し沈黙… 「そうですか…。」 かなりがっかりしたような顔で、何かを言いたそうにしている編集者に何?と水を向ける。 「いや、アンケート結果で…」 「え?ランキング落ちた?」 「あ、一位はそのままなんですが…」 「なんだよ、びっくりするじゃないか⁈じゃぁ、何が問題なの?」 それが…と言いにくそうな顔で 「まだしないのかという意見が、最近多くなってきまして…」 「あぁ、そういう事?」 「そろそろ愛し合ってラブラブしている二人も見たいというご意見が半分くらいになってきてまして…」 はあと編集者がため息をつく。 「俺の書き方は知ってるだろう?俺に言っても無駄!こいつらに言ってくれ!」 そう言って出されたコーヒーを飲み干し、じゃあなと椅子から立ち上がると恨めしそうな顔で俺の背中を見つめているだろう編集者を残し、手を上げてその場から立ち去った。

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