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第16話
部屋に入り、布団の上でぐったりとしながら肩で息をする薫さんの横に座ると、頭を持ち上げて膝に置く。
髪を撫でながら諭すように話しかけた。
「なあ、もういいだろう?昨夜の嘘を本当にしてもいいだろ?」
「…。」
「それに、俺と付き合えば小説にも色々書けるし…何だっけ?」
「…一石二鳥。」
「そう、それ!しかも、美味しいご飯付きの仕事部屋もついてくるし…一石三鳥、いや四鳥?」
「何それ?」
「ん?だから、俺を好きになった方が断然お得ってこと!超優良物件、どう?」
自分を指でさすと、おどけたように言う。
「自分で言うなよな!…それに、別にもうどうでもいいし…」
「どうでもいいなんて、そんなこと言うなよ!」
俺との事を言っていると思い、少し大きい声が出た。
「アニキ達の事だよ…あっ!」
言葉にしてから、まずいと言うように口を手で覆う。
「へぇ?」
「にやけてる…。」
口元に手をやって、にっと笑った。
「そりゃあ、にやけもするさ。あんたが俺のモノになったんだから。」
「あんたのモノになったわけじゃない!アニキの事をアニキとして、兄弟の関係に戻すだけだ。」
「じゃあ、俺との事は?」
「無理矢理しておいて、どんな関係になるんだよ?」
「無理矢理ではないって!きちんと証拠も見せただろう?」
スマホを顔の前にかざすと、薫さんの手がそれを振り払った。
「あんなのが同意って言えると思っているのかよ?」
「その後のは?」
「撮って…いたのか?」
「俺を好きって言ったのもバッチリ!」
消せよと言いながら、スマホを取ろうと手を伸ばすのを軽くいなして、背中を指でなぞる。
ビクンと跳ねた体を抱きしめながら、そのまま先ほどまで俺が暴れまくって開かせた蕾に触れる。
「まだひくついてる…なあ、俺を受け入れてくれるか?好きって言ってくれるか?…嫌なら、諦める。」
「…一石…なんだろう?」
「え?ああ!一石四鳥の超優良物件だよ。」
「どの程度の物件か見極めてからなら…好きになってやってもいい。」
そう言ってふんと笑いながら俺を見る。
「ふう…ん。いいよ。だったら小説に書き切れない位に色々してあげるよ…好きしか言わせなくしてやっから…覚悟しな。」
俺の挑むような視線を真っ向から受け止める薫さんの唇に自分に唇を重ねた。
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