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第8話 貴婦人の集い(2/7)
「…ぁ、あのっ…」
「?」
今からこの人にキスをねだるんだ、と思うと声が掠れた。
思春期で異性にそんなことを頼むなんて、緊張しないわけがない。
いや、別にいやらしくない事だって分かってるけど、それでも次の言葉が出て来ない。
見下ろしてくる青い瞳が、次の言葉を急かしているように見えて勝手に焦ってしまう。
「どうかしたの?」
「えっ…」
おろおろしていると、ユーベルが腰を屈めて目の高さを合わせて来た。
まだ少年と言えそうな顔立ちは全然威圧感がなくて、優しそうな目で、私が話し始めるのを待ってくれているようで、少しずつ緊張がほぐれていく。
「えっと、こ…今度、司祭への昇格試験を受けるんです。そ、それで、あの…ユーベル様に、お祈りして頂けたらな、と…」
これなら怪しまれない、と用意した動機をここぞとばかりに生かした。
言い終えて様子を伺おうとすると、そうするまでもなく、分かりましたと返ってきた。
「ではステラ。跪き、目を閉じて手を組んでください」
言われた通りに跪く。
朗々と語られる祈りの口上は意外と芯の通った声で、何故だろう、存在しないはずの父親の懐に抱かれているような、不思議な安心感があった。
どんなに親しみやすくても、やっぱり格が違う。
そう感じる穏やかな声を耳にしながら、そういえば名乗っていないのに名前を呼ばれたことに気が付いた。
「汝の行く路に、光多からんことを」
口上の最後に、額に手を添えられる。
それから続けて、同じ場所に唇がそっと触れた。
うん、これは…柔らかい。そして温かい。
なんだかご利益がありそうな気がする。
「もういいですよ」
「はい。…ユーベル様、ありがとうございました」
立ち上がってお辞儀をすると、肩をぽんと叩かれた。
「試験、がんばってね」
そう言って微笑むユーベルに見送られて、私は高揚した気持ちを抑えながら、二人の司祭の元へ急ぎ足で戻っていった。
「どうだった? どうだった??」
マリーが声を弾ませる。
私が答えようとすると、一見おしとやかそうなフランが大声で遮った。
「まーーーって! ストップストップ! だめだめ、最後にまとめて聞きたい。その方が比較できるし、何よりステラの表現が変わる可能性もあるから」
早口でまくし立てるフランに慄いていると、マリーがそっかーと何故か頷く。
「そうね、私が焦ってた。フランの焦らしプレイ好きも失念してたけど、三人分経験してから生まれる表現もあるわよね…うん、お楽しみは最後にとっとく!」
「わかってくれてありがとうマリー。やっぱりあなたは私のソウルメイトだわ」
「えへへ、フランも私のソウルメイトよ」
ソウ…? また、何を言ってるのかよく理解できない。
ただ二人の勢いに圧倒されていると、両肩をそれぞれ掴まれた。
「よし、次いってみよ!」
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