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第11話 古傷(13/13)

「ん…ねぇ、わかった」 「ん?」 「気が付いたら、好きになってた」 「…なんだそれ」 ははっと笑ったアルの顔は嬉しそうだった。 そうだ、この顔を何度か見ている内に、もっと見たくなって、気が付いたら彼が心に居着いてしまっていたんだ。 人を好きになる理由なんて、きっとこんなもんだ。 「猫さん…」 君は、私なんかの、どこを気に入ってくれたんだろうか。 女性を好む普通の感覚もあるのに、性的に満足に応えてあげられないような私に、わざわざ選ぶほど魅力があるとは到底思えない。 でも、聞いてしまうのも怖い。 一時的な興味、と可能性としては認められても、アルの口から聞く勇気は出ない。 「俺は、一目惚れ」 「…へ」 口に出さなかったのに、答えられてしまった。 それに、思っていたよりも軽快な答えで、気の抜けた声が出た。 「最初に見た時から、あぁすげぇなって思ってた。本当に司教かよってくらい身のこなしが軽くて、全然魔法使わないと思ったら、いきなり魔力で繋がって」 懐かしい、もうずっと昔のことのように思える。 以前、退魔の要請で遠征した先で、たまたま協力し合ったのがアルだった。 あの時こそ、私はアルのことをなんとも思ってなかった。 ただ、変わった耳と尻尾に驚いたくらいだ。 「お前と繋がってる間、なんとなく気持ちがわかるんだ。控えめなのに芯が強くて、でもどっかで折れそうで。なんか危なっかしいなって気になってさ。でもやっぱ男だし、最初は勘違いだって思おうとしたんだ。けど、笑いながら見つめられるとドキドキして、お前が嬉しそうにすると俺も嬉しいってことに気付いてさ。あぁそうか、やっぱりこいつのこと好きなんだなって」 「も、も…、もういい! もういい!」 「聞きたそうにしてたくせに」 顔が熱い。 そんな風に思われてたのか。 それと、同調している間、感情が伝わるのは初耳だ。 今度から意識してしまいそうで、不器用な魔力の唯一の使い方に支障が出るのは非常に困る。 「ここまで追ってくるくらい惚れてるんだ、忘れんなよ」 「…はい。」 あの日受けた告白よりも、何倍も熱烈な告白だった。 隠せないほど顔が熱い。 アルが「真っ赤だな」と笑って、いつもの長いキスが始まった。 終わる頃にやはり名残惜しくなった私は、アルの好意に甘えて、今日は一緒にベッドで寝てもらった。 この日からもう、嫌な夢をみることはなくなった。

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