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『『だめんず・うぉーく』を止めるとき』エピローグSS・昴太視点その1

 本編の重大なネタバレにご注意!!  そう、俺風間昴太だって分かってはいるのだ。俺の恋人・天花寺彰は、今や囲碁サロンの経営者なのだということを。  あの事件の後、棋士をすっぱり辞めた(休場という形式だが)彰は、俺がかつて勤めていた囲碁サロンを買い取り、『星彩』という名でリニューアルオープンした。あれから約半年になるが、店は順調に繁盛している。それはもちろん、彰が元々有名な棋士だったことや、商売上手なことが理由だろう。でもどうやら、原因はそれだけでは無さそうなのだ。  ――あの女、また来てやがるな。  俺は何だかざわついた気分で、店の隅で彰と談笑する若い女性客の方を見やった。  オーナーが彰に代わってからというもの、この店は一気に女性客が増えた。皆、若手イケメンの元棋士・彰が目当てである。彰は、そんな彼女らに愛想良く対応している。相手は客なのだから、それは当然のことであり、第一ゲイである彰が彼女らに一ミリも興味を抱くはずが無いことは、俺だって承知している。それでも、あまりに親しげな様子を見せつけられれば、やはり気分はよろしくない。特に、今日の女性客とは、彰はやけに長い間話しこんでいるのだ。  ――まさか、本気で彰狙いじゃねえだろうな。  あの事件の後、天花寺家の内情はつまびらかに週刊誌等に書かれたから、彰がゲイだということは世間に知られているはずなのだが。人の噂も七十五日ということなのだろうか。それともまさか、ゲイでも落とす自信があるのだろうか。  ――後の方だとしたら、ますますムカつくわ……。 「風間先生? 今の手、そんなに悪かったですかな?」  気が付けば俺は、相当険しい顔をしていたらしい。宮川さんが、怯えたような顔で俺を見た。俺は慌てて笑顔を作ると、指導に集中し始めたのだった。  

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