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第26話
「……俺もしたくなってきた」
江崎くんは空いた手で自分のちんちんを握りましたが「あー、物足りない」と呟き立ち上がります。イラついた声に森永さんがヒヤリとしたのも束の間、江崎くんは森永さんのちんちんに自分をこすり付けました。
「はっ……、やっぱ森永さんの方がおっきい……」
上気した江崎くんの声。腰を動かして勃起したちんちんをすり合わせ、両手で二つの棒をまとめて扱きます。
「あー、ヤバイこれ……、すげぇ興奮する……」
江崎くんの興奮が伝わって、森永さんがふるっと身体を震わせました。一人でされていた時は快感ばかりが引きずり出されたのに、二人一緒にされたら、頭の奥からビリビリと痺れて、堪えても止められない吐息が溢れます
「はぁっ……ぁ……」
二人で一緒にしたら一人の何倍もの気持ち良さが押し寄せてきました。
──もっと、もっとくっつきたい。抱き締めて、足を絡めて……。
動かせない手と足がもどかしい。キスすら自分でできないのがもどかしい。
──キス、したい……。
ふいに江崎くんの荒い息が近付き、深く森永さんに口付けました。
「……はっ」
反射のように開けた口に強引に舌が割り込みます。ただ押し付け、差し込むだけのたどたどしいディープキスに、啼き声をあげて森永さんがビクビクと身体を震わせました。
二人の腹に生暖かい液体が滴ります。
驚いて身体を離した江崎くんに「ごめ……ん……」と謝り、森永さんは荒い息を吐いています。
「森永さんっ……、森永さんっ」
その姿に一気に血が巡った江崎くんは名前を呼びながら徐々に力を失っていく、射精したばかりのちんちんに自分のちんちんを擦り付けています。さっきまでと違う、柔らかくなっていく優しい感触に乱暴な程の欲望をぶつけます。
「森永さんっ、かけていい……?」
「……っぁ……」
夢中で名前を呼ぶ江崎くんの問い掛けに、長い快感が頭を痺れさせ呼吸すらままならずにふるふると震えながら森永さんが頷きます。
「っあ……イク、んっ」
小さな呻きと共に江崎くんが、森永さんの胸から腹へと精を吐き出します。
「……っっ」
幾度かに分かれて絞り出された精液がパタと肌に落ちる度に、森永さんはフル……と身体を震わせ、小さな吐息を落とします。
江崎くんは全てを絞り出すと息を吐き、森永さんの胸を辿る生ぬるい体液を滑らかな肌に広げました。汗と体液で濡れた身体を怪しげな照明の色が逞しい胸板を妖艶に彩ります。
その色にクラクラして江崎くんは、自分と森永さんから吐き出されたものが塗りたくられた胸をペロリと舐めました。
「ぁっ……ばっか……」
「……美味くない……」
「何やってんだよ……!」
「だって森永さん飲んじゃうから、イケるかなって思って」
「俺は……。いいんだよ、江崎はそんなことしなくても……」
「何で? 気になるじゃないですか! どんな味かなとか、どんな感じとか……」
「何でって……」
むきになる森永さんと、当たり前のように答える江崎くん。江崎くんは拘束された森永さんの胸に、ペタリと頭を預けました。
「……江崎は、女が好きだったろ? 好きって言ってくれたの疑うわけじゃないけど、俺のことは好きでも男が好きなわけじゃないから、だから……」
後ろめたいとか、申し訳ないとか、そんなことを言ったら好きだと言ってくれた江崎くんに悪いことはわかるけど、森永さんはどうしてもその気持ちを打ち消せません。
江崎くんは、胸から直接頭に響く低くて心地よい声をうっとりと楽しみます。
「それなんですけど、俺、男も結構好きかも? って思うんですよね。今まで考えたこと無かったんですけど……。女が好きなのが当たり前っていうか、なんか周りもみんなそうだから、自分もそうかなって思ってたんですけど、森永さんとキスするのも平気だったし、エッチすんのも嫌じゃないし、好きだなって思うし。女と比べてって言われても、他にしたことないからわかんないんですけど……」
「ちょっと待って、江崎は他にしたことないの!?」
「……どうせ、モテませんし。さっき言いませんでしたっけ?
「らしきことは……」
「て、ことなんですよ。……なので、森永さんが初めての彼氏で、初めてエッチした人です」
恥ずかしくなった江崎くんが額を森永さんの胸に擦り付けます。
「ほんとに、そう……?」
「そういうことです」
「……江崎、腕、解いて。すげー抱き締めたい」
森永さんが直球で要望しました。その切羽詰まった声音に、江崎くんはニヤニヤと頬が緩むのが抑えられません。
椅子に拘束されたままの森永さんに軽くキスをしてギュっと抱き締めます。そのまま手枷を解こうとしましたが出来ず、諦めて背面に回って左右の腕を自由にします。逸る手で足の拘束も放ち、解き立ち上がる間ももどかしく二人は抱き合います。
「やっとギュッてできた……。縛るのすごい興奮したんですけど、当分はいいかも。……森永さんにこうされないの、寂しい……」
ホゥ……と大きなため息と共に言われて、森永さんは腕の力を強めます。
「俺も、江崎のこと抱き締めたかった。あー……グリグリしてぇ!」
「グリグリって……。してもいいですよ?」
子どもっぽい森永さんに吹き出して、どうぞと江崎くんがグリグリを促します。森永さんはそれに応えてグリグリと江崎くんの頭を抱き抱え乱暴に撫でました。江崎くんはイヤイヤしながら、それでも大人しく森永さんの手を受け入れています。
小さな子どもを甘やかすような仕草に、甘やかされるような仕草に愛しさが募ります。
「俺さ、江崎のこと大事にしたい。大事にしてもいい?」
「何ですか、それ」
「初めての時、結構強引だったろ? 今更だけど反省してんの。知ってたらもっとすげー大事にしたのに、って」
「あれ以上があるんですか? すげぇ気持ち良かったのに」
「そ、うなら、良かったけど……。あの時に『好きだ』って言えば良かったなーとか、俺の部屋じゃなくても……とかあるんだよ」
「好きって言ってなかったですっけ?」
「多分、言ってない、はず……」
「そっか……。元々森永さんは会社でも優しいし、俺の好きな物くれるし、俺のこと好きなんだなーって思ってたから……」
「そん……なにだった? 周りからも分かる程……?」
好きだという気持ちは、セーブして隠していたつもりだったのにと森永さんは驚き青くなります。
「可愛い弟とかそんな感じですけど、まさかこういう好きとはさすがの俺も思ってなかったですよ。まぁ、俺も森永さん大好きだし結果オーライですね」
赤くなったり青くなったりの森永さんとは対照的な全開笑顔の江崎くん。そうやって笑ってくれるならいいか、と森永さんも頬を緩めます。
「俺は結構重いと思うけど、江崎のこと大事にする。だから俺と付き合って下さい」
「このタイミングで言うんですか?」
江崎くんは笑いますが、森永さんは今、好きが大渋滞中。真剣な顔の森永さんに江崎くんが改まって応えました。
「よろしくお願いします。俺も、森永さんのこと大事にしますからね!」
「よろしくお願いします」
屈託なく笑う江崎くんにつられて森永さんも笑います。
「んっ」
キスをねだって差し出された唇に、チュッと唇で触れてもう一度抱き締めました。
──同じ職場だし、年の差もあるし、江崎くんはノンケ……じゃなくても少なくともバイだし、男同士だし……、
臆病な森永さんはうまくいかなかった時の言い訳を考えます。だけど、江崎くんはいつも森永さんの予想外なことばかりで、森永さんの予測できる未来なんて来そうもありません。
でもきっと、それが楽しい。それが嬉しい。
それに……、いつだって恋は、一番最初が一番ワクワクします。
──今は、江崎と一緒に浮かれていたい……。
「今度は江崎の番な」
森永さんは、唇を突き出して江崎くんにキスをねだりました。
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