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「ところで、黒子」
気力、体力、勢力とも旺盛な猛獣にがっつかれたせいで・・・ベッドから起き上がれなくなった作家を後ろからすっぽり抱きかかえ、餌付けしながら――ここまで胸の内に留めていた事実を、いよいよ白日の下に晒す――おそらく火神がシカゴに戻ったとたん、姿をくらますつもりでいる・・・めっぽう影の薄い彼をどこにも逃さぬために。
(実は・・・ベッドのシーツを取り換える際。マットレスとヘッドボードの隙間に挟まっていた、物件情報が印刷された紙・・・所謂“マイソク“を発見し。なにやら察っするところがあったらしい野生の持ち主である)
「――はい?」
「お前オレに惚れてんだろ」
「は? なに、を・・・突然。・・・そんなわけ、「しらばっくれてもムダ、バレバレだっつの」」
「違います、誤解です・・・だってボクにはずっと好きな「だ~から! それオレだろって。最初にキスした瞬間わかったし、最中も顔と態度で好き好き言いまくってたっつの」
「ウソ」
「ウソじゃねーよ。あんだけダダ漏れてたら・・・オレじゃなくてもわかるわ」
「・・・・・・そんなに、ですか・・・」
「おー。そんなに、だ。つーわけで。もうお前の気持ちもわかったことだし」
「ご心配には及びません。一度抱いてもらえたからって彼氏にしてほしいとか図々しいこと「バーカ、ちっげーよ! んなことが言いたんじゃねぇ。ちゃんと話は最後まで聞け」
「え? じゃあなにを「あー、アレだ・・・永住権取れたらすぐ結婚すっから、お前さっさとオレんとこ(シカゴ)に越して来いってこと」」
「引っ越し? 結婚? ・・・君ボクのこと好きでもなんでもないのに???」
まだ咀嚼中の火神手製のゆで卵サンドが残った小さな口をポカンと開けたまま、ギギギと音が聴こえてきそうな動きで、ソファー代わりをしてくれている大男を振り仰ぎ。
『さっぱり意味がわからないから、ちゃんと説明しろ』とそう――その大きな瞳でもって質してくる・・・近い将来パートナーとなる彼を、今度は横抱きにして。きちんと視線を合わせつつ。引き続き餌付けもしつつ・・・。
――もともと一生の付き合いをするつもりでいた相手・・・黒子が自分のことが好きで、さらに今日セックスすら可能であることがわかった・・・となればもうわざわざ別に恋人を作る必要もないし。
・・・というか。いや、それ以上に。四六時中ともにいてもなんら気兼ねすることなく、自然体のままいられる・・・そして。火神大我というバスケットマンを誰よりも理解し、支え、原動力にすらなり得る唯一の人を、みすみす逃していいわけがないだろうと。結婚したいと思うのは当然のことだろう――といった旨のプロポーズを・・・日本語の語彙が拙いなりに真摯に、真剣に訴える。
・・・が、それはもちろんこのときだけでなく。日本での休暇を終え、所属チームの本拠地であるシカゴに戻り、レギュラーシーズンに突入してからもなお。いっそ毎日の日課・・・ルーティーンワークの一部みたいに。
(アリーナで)一緒に練習しようぜだの、生観戦し放題だの、早く来いだの、待ってるだの、会いたいだの、さみしいだの・・・・・・抱きたい(!)だのと熱烈に口説かれたら――そりゃ。
火神への15年物の恋をさらにじっくり熟成中の作家氏のプロフィールが、いつのまにやらシカゴ在住となっていたって、国籍が変わっていたって・・・どころか。
永遠の愛を誓い既婚者になった彼が、ブルズの本拠地ユナイテッドセンターにて・・・パートナーの雄姿を見守る姿が、ちょくちょく見受けられるようになることだとて(・・・が、そのたびしょっちゅう空席と間違えられ、毎回一騒動あるため。いつの間にやらアリーナの名物(こちらはゴーストとして)、あるいは伝説(でこっちはフェアリー)として・・・“幻のシックスマン”の異名を取って以来、またも噂の的にされてしまう運命の、黒子テツヤ氏である)。
そう遠くない未来起こりうる、現実の話しである――。
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