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「ほんとにいーんだな?」
ここに至るまでに、なんだかんだアレコレ言い訳というか、条件を出しつつも――なんのことはない。ふたを開けてみれば、誘われた火神の方が黒子を寝室に連れ込んでいたわけだが。
まあ、とにもかくにも・・・。
「――はい」
「ならさっきオレが言ったことも「君がその気になれなかったら(勃たなかったら)この話しはナシ。・・・ですよね? ちゃんとわかってます」」
「ま、そこまで覚悟ができてんなら? これ以上何も言わねーよ」
「無茶言ってすみません、火神君。けど・・・ありがとう」
「おー、どういたしまして。・・・・・・で、キスは? していーの?」
「ええ、はい。君さえよければ・・・その、たくさんしてほしいです」
「へぇ、お前キス好きなんだ・・・?」
誰とも付き合ったことないっつってたわりに、キスはしたことあんだ? ――と。
キュッと口角の上がった薄く小ぶりな唇の合わせ目に、親指の先を押し付け。ふにふにして弄びつつ尋ねる火神に。
「いえ、あの・・・(王様)ゲームとかでしか経験はないですけど・・・物語の主人公たちにとっては重要な行為なので」
・・・なんて。ほんとはボク自身が君といっぱいキスをしたいからってのが、一番の理由ですけどね? などという本音は胸の内に隠しつつ。もっともらしい言い訳で(とはいえ、こちらも本心であるが)素直な彼を納得させて。
「へぇ、なるほどな。じゃあ早速・・・ン」
「ン・・・!? ええ、はい・・・・・・何分にも未熟者ですのでお世話掛けるとは思いますが、どうかよろしくお願いします」
「ブッハ・・・! なん?! おまっ、それ今言うことか? ・・・ムード!」
「え? だって・・・」
「いーから、もう黙ってろ「いえ、けど・・・あ! せめて明かり・・・暗く」
「ダーメ!」
「・・・けどボクの裸なんか見ても・・・って。んぅ(舌入ってきた)!?」
「いーから! こっち(キス)に集中」
「・・・ん、ん、はぁ・・・んん!・・・ぷぁ! くるし、」
「バァーカ、鼻で息すんだ、鼻で! ・・・ほれ、やってみ?」
「ン。ハ、ィ・・・ん、ん、」
「そうだ・・・ン、その調子、・・・ン、」
この年になって(世間でいうならすでに黒子は魔法使いになっているはずなのだが・・・)初めて経験するすべてのことがらに、いちいち爆発四散しそうになりながらも・・・それでも。
生涯たった一度きりに、否。たとえ最後まで途中でさじを投げられようと――15年以上一途に恋してきた相手に抱いてもらえるという、この上ない至福を、僥倖を・・・できるならすべて。
「口ん中そんなきもちいーの? とろっとろじゃんお前(・・・つか。とりあえず今は突っ込まずにいてやるけど・・・いろいろダダ洩れすぎだっつの)」
「・・・ん。きもち、い・・・」
――己を組き敷きながら、口端からこぼれた唾液を指でぬぐってみせる彼のその・・・雄くさい筋骨隆々な身体や。こちらの反応を見逃すまいと見下ろしてくる、熱を帯びた眼差しや。触れ合う肌の湿った感触や、温度や。
口内で暴れまわる分厚い舌の感触や、弱いところを探るように身体中を這いまわる・・・その大きな手によってもらたらされる快感や――行為中も端々に滲む彼の気遣いや生真面目さやまで含めて。そういうすべてを、一瞬たりと逃すことなく刻み付けておきたいと願い。そして。
一見粗野にも薄情にも映るが実は・・・一度懐の奥に入れた相手を大切にし。甲斐甲斐しく面倒を見。あまつさえ寄り添い、好いてもいない同性の男を抱こうとまでしてくれている・・・情の深い心優しい虎に、心の中で何度も礼と詫びを告げながら・・・。
「お前も触って・・・?」
そんで・・・どこをどういうふうにしたらお前が感じるか、オレに教えて? と・・・赤く色づいた耳朶にぴたりと唇を押し付け、一層低くなったかすれ声で甘く強請りながら、黒子の右腕を掴むと。
つい今しがた最後に残っていた下着を脱ぎ捨てた・・・その少し芯を持ち始めた陰茎を直に握らせ、愛撫を促す火神に向かいコクンと頷き――。
「よかった――ちゃんと硬くなりました」
「おー。なんとかいけそーだな・・・安心した?」
両手を使って互いの勃起をいっしょうけんめい可愛がる・・・2メートル声の巨体が組んだ胡座の上にすっぽり収まった、うすっぺらい肩に腕を回して抱き寄せ。前髪の生え際辺りにちゅっと口づけながら尋ねる火神に・・・。
「――あの」
「んー?」
「後ろの準備はできてますから、火神君さえよければ、その・・・いつでも・・・」
ワガママを聞き入れてくれた奇特な人を、いかに萎えさせないように・・・少しでも煩わせることのないようにと。準備万端整えている旨を告げてみたら・・・。
(とはいえ・・・黒子が想定していた以上に火神の火神が立派であるため、まったく不安がないと言えばウソになるが、もともと多少の出血や痛みは覚悟しているから・・・あとは野となれ山となれ、である)
「いつでもって・・・準備って。いったいなにしたんだよ?」
「えっと、さっきシャワー浴びたとき中キレイにしておきましたし、昨日の夜プラグで広げておいたから、まだ柔らかいと「ハッ・・・道具まで使って? そうまでしてオレに抱いてほしかった? いやそれとももともと・・・オナニーのときは後ろも弄ってんの? なー、どっち? くろこ」」
「そ、そんなことわざわざ口にして言うことじゃ「つーことは。どっちも合ってるっつーことか」」
「いえ、ちがっ「オレに抱かれるとこ想像しながら一人でしたんだろ」」
「・・・だって」
その言葉に、なぜかすごい勢いで食いついてきた虎ごと・・・再びベッドころんと転がされ、
さらには、ぐいぐい――さっきまでより硬さと大きさが増した勃起を押し付けつつ。
欲と好奇心に濡れた捕食者の目でもって、組み敷いた獲物のを見下ろしつつ。
喜々として言葉攻めまでしてくる・・・かつて一度たりとお目にかかったことのないその姿に、恐れおののきつつも。顔を真っ赤にして恥じらい、動揺しまくっている間に――。
「やっぱそーなんだ。・・・つーことは後ろもちゃんと感じるっつーこと?」
「えっと――は・・・・・・い」
「ふーん。どんくらい?」
「どんくらいと言われても」
「じゃあナカ直接触って確かめてみていーか」
「いいか・・・って、ひゃ・・・ァンン!」
「うっわ、なに・・・入口なぞられるだけでもそんな感じんの・・・やらしー身体してんな、お前」
「やぁ・・・いわな・・・で」
「あ? なんでだよ・・・むしろもっとエロくてもいーくれーだって」
当初見せていた躊躇がウソみたいに・・・いつのまに見につけた知識なのは知らないが、ノリノリでローションの在りかを尋ねてきたかと思ったら・・・15年来の影の尻穴に指を突っ込み、掻き回し、ほぐし――と。心ゆくまで弄り倒して、黒子をふにゃふにゃにトロけさせ・・・。
「はぁ~・・・お前んナカ、めちゃくちゃ気持ちいーわ」
「ん、ん・・・ボク、も・・・すご、きもち、い・・・」
「そっか・・・よかったな」
「は、い。きみ、が・・・やさし、く、してくれたおかげ・・・ありがと、ざいます・・・」
「・・・らしくもねぇ。こんくれーで泣いてんじゃねーよ、バカくろこ」
「すみませ、なんか・・・むね、が・・・いっぱい、に・・・なっちゃって」
「あー・・・お前初めてだしな・・・しかたねーか」
無事挿入を果たしてからも――初めて男を抱く火神にしても・・・加減のほどが今一つわからぬため。もっとガツガツ腰を振りたいところを必死にこらえて、できるだけゆっくり・・・ケガをさせたり痛がらせたりしないようにと、細心の注意を払ってことに及んでいたのを・・・。
「・・・です」
「けどどうせ泣くなら・・・」
これだけぐずぐずになって感じまくってんなら、もっと激しくしてもへーきだろ・・・と。
「・・・は? ・・・え?」
「(気持ち)ヨすぎて泣く方がよくねぇ・・・か?!」
「! はぁぁ・・・ぁ、ぁ、ぁ・・・そ・・・こ、(乳首と)いっしょ・・・こすっちゃ・・・だめ、いや・・・だめ・・・きちゃ、う・・・」
「んー? なにが来ちゃうって?」
「きも、ち・・・い、のきちゃ・・・イっちゃ、う、から」
「あー・・・確かに。ナカ・・・ひだがうねり出した。・・・っ、けど・・・まじこれやべな・・・くっそ、もってかれる・・・」
今度は測位の体制をとり、背中側からすっぽり抱きこんだ・・・視線のちょうど先にあった、頼りなげなうなじや、首筋を甘噛みしたり口づけたり。鼻先をぐりぐり押し付け、甘やかな体臭で肺をいっぱいにしながら――本能の赴くままひたすら・・・狭くて、熱くて、ぎゅうぎゅう絡みついてくる快感に・・・夢中で陰茎を抜き差しし。
「じゃ、いっしょ・・・」
「いーぜ? 一緒な」
とりあえず、一度出すものを出しておいた方が後々のためにもいいかと・・・黒子の求めに素直に応じて、仲良く一緒に達したのち――。
ありあまる体力を活かし、早速二回戦に突入すべく――黒子が用意していてくれたコンドームのパッケージに手を伸ばした(用意周到にM~XLまで各種取り揃えてあったため。彼の本気度を改めて痛感させられた虎である)、現役バリバリのアスリートのやる気漲るその姿を・・・ゼイゼイ肩で息をしながら視線で追っていた水色の瞳が、怯えに揺れ。絶頂の余韻に未だ震える背が、恐れで慄くのも意に介さず――。
セックスとなったとたん、いつもの無表情や意地っ張りがウソみたいに・・・表情から態度から、何から何まで、取り繕うことも秘めることもなく素直に。ありのままを見せてくれる、性に初心で童顔な30歳男(またの名を魔法使い)を、とりあえず計三回ほど抱いて。
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