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*****  「ほんとにいーんだな?」  ここに至るまでに、なんだかんだアレコレ言い訳というか、条件を出しつつも――なんのことはない。ふたを開けてみれば、誘われた火神の方が黒子を寝室に連れ込んでいたわけだが。 まあ、とにもかくにも・・・。  「――はい」 「ならさっきオレが言ったことも「君がその気になれなかったら(勃たなかったら)この話しはナシ。・・・ですよね? ちゃんとわかってます」」 「ま、そこまで覚悟ができてんなら? これ以上何も言わねーよ」 「無茶言ってすみません、火神君。けど・・・ありがとう」 「おー、どういたしまして。・・・・・・で、キスは? していーの?」 「ええ、はい。君さえよければ・・・その、たくさんしてほしいです」 「へぇ、お前キス好きなんだ・・・?」  誰とも付き合ったことないっつってたわりに、キスはしたことあんだ? ――と。 キュッと口角の上がった薄く小ぶりな唇の合わせ目に、親指の先を押し付け。ふにふにして弄びつつ尋ねる火神に。 「いえ、あの・・・(王様)ゲームとかでしか経験はないですけど・・・物語の主人公たちにとっては重要な行為なので」  ・・・なんて。ほんとはボク自身が君といっぱいキスをしたいからってのが、一番の理由ですけどね? などという本音は胸の内に隠しつつ。もっともらしい言い訳で(とはいえ、こちらも本心であるが)素直な彼を納得させて。 「へぇ、なるほどな。じゃあ早速・・・ン」 「ン・・・!? ええ、はい・・・・・・何分にも未熟者ですのでお世話掛けるとは思いますが、どうかよろしくお願いします」 「ブッハ・・・! なん?! おまっ、それ今言うことか? ・・・ムード!」 「え? だって・・・」 「いーから、もう黙ってろ「いえ、けど・・・あ! せめて明かり・・・暗く」 「ダーメ!」 「・・・けどボクの裸なんか見ても・・・って。んぅ(舌入ってきた)!?」 「いーから! こっち(キス)に集中」 「・・・ん、ん、はぁ・・・んん!・・・ぷぁ! くるし、」 「バァーカ、鼻で息すんだ、鼻で! ・・・ほれ、やってみ?」 「ン。ハ、ィ・・・ん、ん、」 「そうだ・・・ン、その調子、・・・ン、」  この年になって(世間でいうならすでに黒子は魔法使いになっているはずなのだが・・・)初めて経験するすべてのことがらに、いちいち爆発四散しそうになりながらも・・・それでも。 生涯たった一度きりに、否。たとえ最後まで途中でさじを投げられようと――15年以上一途に恋してきた相手に抱いてもらえるという、この上ない至福を、僥倖を・・・できるならすべて。 「口ん中そんなきもちいーの? とろっとろじゃんお前(・・・つか。とりあえず今は突っ込まずにいてやるけど・・・いろいろダダ洩れすぎだっつの)」 「・・・ん。きもち、い・・・」  ――己を組き敷きながら、口端からこぼれた唾液を指でぬぐってみせる彼のその・・・雄くさい筋骨隆々な身体や。こちらの反応を見逃すまいと見下ろしてくる、熱を帯びた眼差しや。触れ合う肌の湿った感触や、温度や。  口内で暴れまわる分厚い舌の感触や、弱いところを探るように身体中を這いまわる・・・その大きな手によってもらたらされる快感や――行為中も端々に滲む彼の気遣いや生真面目さやまで含めて。そういうすべてを、一瞬たりと逃すことなく刻み付けておきたいと願い。そして。  一見粗野にも薄情にも映るが実は・・・一度懐の奥に入れた相手を大切にし。甲斐甲斐しく面倒を見。あまつさえ寄り添い、好いてもいない同性の男を抱こうとまでしてくれている・・・情の深い心優しい虎に、心の中で何度も礼と詫びを告げながら・・・。 「お前も触って・・・?」  そんで・・・どこをどういうふうにしたらお前が感じるか、オレに教えて? と・・・赤く色づいた耳朶にぴたりと唇を押し付け、一層低くなったかすれ声で甘く強請りながら、黒子の右腕を掴むと。  つい今しがた最後に残っていた下着を脱ぎ捨てた・・・その少し芯を持ち始めた陰茎を直に握らせ、愛撫を促す火神に向かいコクンと頷き――。  「よかった――ちゃんと硬くなりました」 「おー。なんとかいけそーだな・・・安心した?」  両手を使って互いの勃起をいっしょうけんめい可愛がる・・・2メートル声の巨体が組んだ胡座の上にすっぽり収まった、うすっぺらい肩に腕を回して抱き寄せ。前髪の生え際辺りにちゅっと口づけながら尋ねる火神に・・・。 「――あの」 「んー?」 「後ろの準備はできてますから、火神君さえよければ、その・・・いつでも・・・」  ワガママを聞き入れてくれた奇特な人を、いかに萎えさせないように・・・少しでも煩わせることのないようにと。準備万端整えている旨を告げてみたら・・・。 (とはいえ・・・黒子が想定していた以上に火神の火神が立派であるため、まったく不安がないと言えばウソになるが、もともと多少の出血や痛みは覚悟しているから・・・あとは野となれ山となれ、である) 「いつでもって・・・準備って。いったいなにしたんだよ?」 「えっと、さっきシャワー浴びたとき中キレイにしておきましたし、昨日の夜プラグで広げておいたから、まだ柔らかいと「ハッ・・・道具まで使って? そうまでしてオレに抱いてほしかった? いやそれとももともと・・・オナニーのときは後ろも弄ってんの? なー、どっち? くろこ」」 「そ、そんなことわざわざ口にして言うことじゃ「つーことは。どっちも合ってるっつーことか」」 「いえ、ちがっ「オレに抱かれるとこ想像しながら一人でしたんだろ」」 「・・・だって」  その言葉に、なぜかすごい勢いで食いついてきた虎ごと・・・再びベッドころんと転がされ、 さらには、ぐいぐい――さっきまでより硬さと大きさが増した勃起を押し付けつつ。 欲と好奇心に濡れた捕食者の目でもって、組み敷いた獲物のを見下ろしつつ。 喜々として言葉攻めまでしてくる・・・かつて一度たりとお目にかかったことのないその姿に、恐れおののきつつも。顔を真っ赤にして恥じらい、動揺しまくっている間に――。 「やっぱそーなんだ。・・・つーことは後ろもちゃんと感じるっつーこと?」 「えっと――は・・・・・・い」 「ふーん。どんくらい?」 「どんくらいと言われても」 「じゃあナカ直接触って確かめてみていーか」 「いいか・・・って、ひゃ・・・ァンン!」 「うっわ、なに・・・入口なぞられるだけでもそんな感じんの・・・やらしー身体してんな、お前」 「やぁ・・・いわな・・・で」 「あ? なんでだよ・・・むしろもっとエロくてもいーくれーだって」  当初見せていた躊躇がウソみたいに・・・いつのまに見につけた知識なのは知らないが、ノリノリでローションの在りかを尋ねてきたかと思ったら・・・15年来の影の尻穴に指を突っ込み、掻き回し、ほぐし――と。心ゆくまで弄り倒して、黒子をふにゃふにゃにトロけさせ・・・。  「はぁ~・・・お前んナカ、めちゃくちゃ気持ちいーわ」 「ん、ん・・・ボク、も・・・すご、きもち、い・・・」 「そっか・・・よかったな」 「は、い。きみ、が・・・やさし、く、してくれたおかげ・・・ありがと、ざいます・・・」 「・・・らしくもねぇ。こんくれーで泣いてんじゃねーよ、バカくろこ」 「すみませ、なんか・・・むね、が・・・いっぱい、に・・・なっちゃって」 「あー・・・お前初めてだしな・・・しかたねーか」  無事挿入を果たしてからも――初めて男を抱く火神にしても・・・加減のほどが今一つわからぬため。もっとガツガツ腰を振りたいところを必死にこらえて、できるだけゆっくり・・・ケガをさせたり痛がらせたりしないようにと、細心の注意を払ってことに及んでいたのを・・・。 「・・・です」 「けどどうせ泣くなら・・・」  これだけぐずぐずになって感じまくってんなら、もっと激しくしてもへーきだろ・・・と。 「・・・は? ・・・え?」 「(気持ち)ヨすぎて泣く方がよくねぇ・・・か?!」 「! はぁぁ・・・ぁ、ぁ、ぁ・・・そ・・・こ、(乳首と)いっしょ・・・こすっちゃ・・・だめ、いや・・・だめ・・・きちゃ、う・・・」 「んー? なにが来ちゃうって?」 「きも、ち・・・い、のきちゃ・・・イっちゃ、う、から」 「あー・・・確かに。ナカ・・・ひだがうねり出した。・・・っ、けど・・・まじこれやべな・・・くっそ、もってかれる・・・」  今度は測位の体制をとり、背中側からすっぽり抱きこんだ・・・視線のちょうど先にあった、頼りなげなうなじや、首筋を甘噛みしたり口づけたり。鼻先をぐりぐり押し付け、甘やかな体臭で肺をいっぱいにしながら――本能の赴くままひたすら・・・狭くて、熱くて、ぎゅうぎゅう絡みついてくる快感に・・・夢中で陰茎を抜き差しし。 「じゃ、いっしょ・・・」 「いーぜ? 一緒な」  とりあえず、一度出すものを出しておいた方が後々のためにもいいかと・・・黒子の求めに素直に応じて、仲良く一緒に達したのち――。  ありあまる体力を活かし、早速二回戦に突入すべく――黒子が用意していてくれたコンドームのパッケージに手を伸ばした(用意周到にM~XLまで各種取り揃えてあったため。彼の本気度を改めて痛感させられた虎である)、現役バリバリのアスリートのやる気漲るその姿を・・・ゼイゼイ肩で息をしながら視線で追っていた水色の瞳が、怯えに揺れ。絶頂の余韻に未だ震える背が、恐れで慄くのも意に介さず――。  セックスとなったとたん、いつもの無表情や意地っ張りがウソみたいに・・・表情から態度から、何から何まで、取り繕うことも秘めることもなく素直に。ありのままを見せてくれる、性に初心で童顔な30歳男(またの名を魔法使い)を、とりあえず計三回ほど抱いて。

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