1 / 83

プロローグ : 戸惑わせるのが好き *

 ――俺には、どうしても好きになれない奴がいた。 「く……っ、んっ、あっ」  遠慮なく、人のナカをかき回してくるくせに。  俺のことを、怖いくらい強く。  優しく、抱き締めてくる奴だ。 「お前って、相変わらずココ……弱いなァ?」 「ふ、ぁ……っ! おまっ、やめ……っ、んっ!」  ぐっ、と……奥まで突かれる。  そうされると、体中に電気でも流れたかのように。 「ぁあ、っ!」  震えてしまう。 「やぁ、あっ! や、め……っ! んぁ、っ! イ、く……っ!」  ――蹴り、飛ばしたい……っ!  なのに俺は、コイツを蹴り飛ばせないんだ。 「んんっ、あっ! ぁあっ!」  ――コイツにとっての俺は、何なのか。  ――俺にとってのコイツは、ただの……嫌いな奴なのに。 「はっ、ぁ、ん……っ」  熱い息を吐いて。  互いに達しながら、ぼんやりと考えてしまう。  ――ただ、俺はコイツが嫌いで。  ――おそらく、コイツも俺が嫌い。  ――なら……この関係は? 「真冬(まふゆ)……ッ」  何でコイツは、二人になった途端。  こんなに優しく……俺の名前を呼ぶんだ?  ハッキリとしない頭でも、一つだけ確実に分かることがある。  それは、俺はコイツが。  ――ヤッパリ、嫌いなんだということ。 プロローグ・戸惑わせるのが好き 了

ともだちにシェアしよう!