2 / 83
1話 : 追い詰めるのが好き 1
小さい頃から、ずっとだった。
『あ、あの……真冬くんっ。……今、いい?』
初めてソレを言われたのは、小学校高学年のとき。
周りの友達が、男女を意識し始めた。
そういう時期。
『訊きたいことが、あって……っ』
同じクラスだけど、特別仲がいいワケじゃない女子。
そんな子に声をかけられた俺こと諸星 真冬は。
その女子に対して、心底不思議に思った。それは今でも、ハッキリと覚えている。
『なに?』
俺は立ち止まって、女子の方を向く。
するとその女子は突然、顔を真っ赤にし始めた。
そんな様子さえも不思議に思っている俺を気にせず、女子はゆっくりと口を開く。
『美鶴 くんのこと、なんだけど……っ』
女子から、高遠原 美鶴のことを訊かれた。
突拍子もない質問で、尚更不思議に思ったことも……鮮明に覚えている。
『え、っと? ……美鶴?』
当時の俺は皮肉なことに、高遠原美鶴と仲の良い幼馴染みだった。
だから、俺に美鶴のことを訊いてきた理由は、何となく分かる。
……だけど。
『何で美鶴に訊かないの?』
子供ながらに、それが心底不思議でならなかった。
『あの……美鶴くん、真冬くんとならいろんなお話ししてそうだなって、思って……っ』
――『いろんなお話』とは、何だろう?
当然の疑問は湧いてきたけれど、この女子が言いたいことを……何となく、理解した。
――この視線は、おそらく……期待。
『……なに、訊きたいの?』
女子は、控えめな口調のまま訊ねる。
『私のこと……どう、思ってるかなって……っ』
特に手間でもなかったので、俺は素直に高遠原へ訊ねた。
あの女子について、どう思っているのかを。
そして後日、高遠原からの返事を素直に伝えた。
『好きじゃないし、興味ないって言ってたよ』
まさに、伝書鳩のような役割だ。
――だが。
一度、誰かのそういったお願いをきいてしまったら、似たお願いが舞い込んでくる。
けれど。
『今度はアイツか……。好きじゃないし興味もない。そう答えておけ』
どの女子が相手でも、高遠原の返答は同じ。
だからこそ、俺は数々の女子から求められた【高遠原の答え】を、素直に伝えた。
すると女子は……泣くか、激怒する。
好きな相手からドストレートに『眼中にない』と言われたのだから、当然だろう。
しかし……それを見ていた男子は【真冬が真冬の意思で女子を泣かした】と誤解をしてしまい、俺と距離を置き始めた。
――それが、全ての始まり。
――その時期に発覚した、高遠原美鶴の本性。
俺はゆっくりと、高遠原から……距離を取り始めた。
アイツと関わっていたら、大切なものがどんどん……奪われていくから。
ともだちにシェアしよう!