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1話 : 追い詰めるのが好き 1

 小さい頃から、ずっとだった。 『あ、あの……真冬くんっ。……今、いい?』  初めてソレを言われたのは、小学校高学年のとき。  周りの友達が、男女を意識し始めた。  そういう時期。 『訊きたいことが、あって……っ』  同じクラスだけど、特別仲がいいワケじゃない女子。  そんな子に声をかけられた俺こと諸星(もろぼし)真冬は。  その女子に対して、心底不思議に思った。それは今でも、ハッキリと覚えている。 『なに?』  俺は立ち止まって、女子の方を向く。  するとその女子は突然、顔を真っ赤にし始めた。  そんな様子さえも不思議に思っている俺を気にせず、女子はゆっくりと口を開く。 『美鶴(みつる)くんのこと、なんだけど……っ』  女子から、高遠原(たかとおばら)美鶴のことを訊かれた。  突拍子もない質問で、尚更不思議に思ったことも……鮮明に覚えている。 『え、っと? ……美鶴?』  当時の俺は皮肉なことに、高遠原美鶴と仲の良い幼馴染みだった。  だから、俺に美鶴のことを訊いてきた理由は、何となく分かる。  ……だけど。 『何で美鶴に訊かないの?』  子供ながらに、それが心底不思議でならなかった。 『あの……美鶴くん、真冬くんとならいろんなお話ししてそうだなって、思って……っ』  ――『いろんなお話』とは、何だろう?  当然の疑問は湧いてきたけれど、この女子が言いたいことを……何となく、理解した。  ――この視線は、おそらく……期待。 『……なに、訊きたいの?』  女子は、控えめな口調のまま訊ねる。 『私のこと……どう、思ってるかなって……っ』  特に手間でもなかったので、俺は素直に高遠原へ訊ねた。  あの女子について、どう思っているのかを。  そして後日、高遠原からの返事を素直に伝えた。 『好きじゃないし、興味ないって言ってたよ』  まさに、伝書鳩のような役割だ。  ――だが。  一度、誰かのそういったお願いをきいてしまったら、似たお願いが舞い込んでくる。  けれど。 『今度はアイツか……。好きじゃないし興味もない。そう答えておけ』  どの女子が相手でも、高遠原の返答は同じ。  だからこそ、俺は数々の女子から求められた【高遠原の答え】を、素直に伝えた。  すると女子は……泣くか、激怒する。  好きな相手からドストレートに『眼中にない』と言われたのだから、当然だろう。  しかし……それを見ていた男子は【真冬が真冬の意思で女子を泣かした】と誤解をしてしまい、俺と距離を置き始めた。  ――それが、全ての始まり。  ――その時期に発覚した、高遠原美鶴の本性。  俺はゆっくりと、高遠原から……距離を取り始めた。  アイツと関わっていたら、大切なものがどんどん……奪われていくから。

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