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……それだけ、なのか?
俺に対して言うことは、本当にそれだけ?
警戒する俺を、高遠原が見つめてくる。
「……今更、こんなこと言っても……お前は、俺様を信じないと思うが」
コイツらしくもない、やけに弱気な言い方だ。
なにか言いたげなその視線から目を逸らせず……俺も、高遠原を見つめる。
「……な、ん……だよっ?」
ベッドに座る高遠原を見上げて、続きを促す。
その声は、なぜか……震えていた。
一度閉じた口を、高遠原はもう一度……開く。
「――真冬」
高遠原から紡がれる……下の、名前。
高遠原はベッドの上に座ったまま、床に座る俺に対して。
ハッキリと、告げた。
「――好きだ」
そんな、突拍子もない言葉を。
「…………は、っ?」
声がうまく出せなくて、俺はポカンとした顔を浮かべてしまっただろう。
だって、だって……そうだろう?
――今、高遠原は何て言った?
――好き?
――なにが?
「お前の、あることないこと悪い噂を流したのには……色々と、理由があった。けど、一番大きな理由は……俺様以外の奴と仲良くしてるのを見るのが、不快だったからだ」
俺から、友達を奪った理由が、それ……?
まるで……嫉妬のような、そんな理由?
「俺様は……俺様だけが、真冬の友達でいるつもりだった。お前の周りから友達がいなくなって、俺様だけが残ったらそれでいいって……そういう、ガキくせェ話だ。……だけど、真冬に聞かれたから。アホらしい作戦が、失敗した」
高遠原はベッドから下り。
床に座り込んでいる俺の頬に、手を当てる。
「い、いやだ……っ! 離――」
「学校で冷たくしてンのは、どう振る舞ったらいいのか分かんねェからだ。……正直、今も分かんねェよ」
「だ、だったら、近寄るなよ……っ!」
「やっと二人きりになれたってのにか? それはねェだろ、バカか?」
熱く見つめられると、俺だって。
……どうしていいのか、分からない。
高遠原は俺の頬を撫で、ニッと……口角を上げた。
「好きだ、真冬」
そして、そのまま。
――深く、口づけてきた。
「ん、ん……っ!」
ただくっつけてくるだけではなく、無理矢理……舌を使って、口内に入り込んでくる。そんな、乱暴なキスだ。
なに一つ理解できずに、抵抗すらもうまくできない。
だが、自分がなにをされているのか理解し……俺は慌てて、高遠原を押し返す。
「――な、に……っ! お前、さっきから何なんだよっ! なに、言ってるんだよ……っ!」
「『なに』って……俺様の気持ちだが?」
その『気持ち』っていうのは……好きってことだよな?
(そんなの、信じられるワケないだろ……っ!)
子供の頃に、俺を裏切って……孤立させた、くせに?
学校で会うたびに嫌味を言ってきて、嫌がらせをして?
俺を、虐めたがるくせに?
そんな相手の、なにをどう信じたらいいのか……俺には、わからなかった。
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