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必死に考えをまとめようとしてみる。
だけど、思考は全然まとまってくれない。
だというのに……高遠原はまた、俺にキスをしてこようとした。
だから俺は慌てて距離を置き、狼狽えてしまう。
「お、お前は俺が嫌いなんだろっ! だから、そうやって俺が困惑するようなことを言って……っ! やっ、やめろよ、マジでっ!」
『好きだ』なんて……今まで、誰からも言われたことがない。
高遠原が言いふらした噂のせいで、浮いた話一つ出なかったからだ。
だから、当然告白なんてしたことないし、されたことも……ない。
戸惑う俺を見て、高遠原が肩を揺らして笑う。
「ハハッ! 何だよ、お前……もしかして、照れてるのか?」
「ち、ちが……っ!」
指摘されると、顔に熱が集まってくる。
これは、告白とかに耐性がないからだ。高遠原のことを意識しているわけじゃ、ない。
俺はコイツが、大嫌いなんだから。
「やべェな……。お前ってホント、たまんねェ」
体を押して距離を取ったのに、高遠原は怯まない。
ズケズケと、距離を詰めてくる。
そして突然……不敵に、笑った。
「……そうだ」
ニヤリと、高遠原の口角が上がる。
「お前さ、さっきの……俺様の手で射精したってこと、他の奴に知られたくないんだよな?」
「……っ!」
「だったら……今度こそお前は、俺様から逃げられない。……そうだよな?」
告白なんて、一瞬にして頭から消し飛んだ。
「ヤッパリ、お前は俺が嫌いなんだろっ!」
男が男を好きになるなんて、そうそうある話じゃない。
さっきの告白は、俺をホモに仕立て上げる為の嘘なんだ。
「別に、とうとでも? どうせ初めから作戦は破綻してンだ。だったら、今度こそお前が逃げないように縛りつける。……当然だろ」
「離れろっ!」
子供の頃にありがちな、独占欲。それが理由だったとしても、俺はコイツを許せやしない。
現に……コイツは今また、別の方法で俺に嫌がらせをしようとしている。だったら、さっきの告白はなにかしらの布石に違いない。そう考えるのが、妥当だろう。
「真冬、怯えんなよ」
高遠原の手が、伸ばされる。
「い、やだ……っ」
抵抗しようとしたときには、もう遅い。
「あ……っ」
無駄に立派な腕で、腰を引き寄せられたからだ。
「まぁ、怯えてるお前も可愛いけどな?」
「お前相手に誰が怯えるかよ……っ!」
せっかく広げた距離を、あっという間に詰められる。
「いやだって、言ってるだろ……っ! 離れろ、高遠原……っ!」
「俺様のことを下の名前で呼んだら、考えてやってもいいぜ?」
「誰が呼ぶかよっ!」
「なら、交渉決裂だな」
どうしたってコイツは、俺を逃がさない。
「怖いぐらい優しくシてやるよ」
顎に指が添えられ、目が逸らせなくなった。
高遠原の瞳には……情けない顔をしている俺が、映っている。
そんな俺が見えなくなったのは……もう一度、高遠原と唇が重なったときだった。
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